待ち受けカノジョ。
奈緒…

奈緒は…死んだ?


「いるんでしょ…?」


カレンダーに落ちる、丸い水滴。


「いたずらしないで…出てきてよ」


それは、とめどなくポタポタと落ちる。

携帯にも、手にも、床にも。


「ねぇ、奈緒っ!!」

叫んだ。

「奈緒――っ!!」

力の限り、叫んだ。

かすれたオレの声だけが、むなしく部屋に響く。


「なんで…なんでっ!!」


止まらない涙のように、奈緒との思い出が後から後から湧き出す。


携帯の中でうわーんと大きい声で泣く奈緒。

怖くて不安な本心を隠して強がる奈緒。

ハムスターみたいに丸まって眠る奈緒。

あきれた様子でオレを見る奈緒。

たまには怒ってくれる奈緒。

目を見開いてキラキラした笑顔の奈緒。


…そうだよ。


オレのそばには、いつも奈緒がいた。

奈緒の笑顔がオレの支えだった。


これからも…

奈緒とずっと一緒にいたかった。


「うっ…ううっ…!!」

震える両手で包み込んだ携帯を、そっと頬に当てる。


涙の雫が、奈緒のいない抜け殻の携帯を伝って落ちていった。

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