待ち受けカノジョ。
電車のイスに座り、ゆらゆら揺れながら、ぼんやり窓の外を眺める。


流れていく街並み

山の向こうにはデカい入道雲


ほんと、いい天気。


もうすぐ夏だな…


遠くにオレの学校が見えてきた。

ジャージ着たアリみたいなのがグラウンドでマラソンしてる。


いま4時間目くらいか。

みんなそれぞれ生きてるんだろうけど、こうやって遠くからみたら、虫ケラみたい。


オレも…アリンコとたいして変わんねーかもな。


そして、明日になったらオレは普通に学校に行く。


だけど、携帯に閉じ込められている奈緒は、学校どころかどこにも行けないんだ。


おばさんの涙。

ポケットの中でずっと震えていた携帯。


オレはどうしたらいい?

オレには何ができる?


キキィっと電車がブレーキをかけ、体がグラッとよろける。


うつろなオレの目に、吊り広告の鮮やかな色が映った。

オレが買おうとしてたスマホを持ったアイドルの、わざとらしい営業ドヤ顔。


ちぇ、なんかムカつく。

こっち見んなよ…
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