待ち受けカノジョ。
―――

父ちゃんの店を通り過ぎて、

その横の店“あんていく”の木の扉を開けた。


ガランガランと、入り口の古いドアベルが重い音で鳴る。


「ただいまー」

「ああ、順平!心配してたんだよ!?」

奥からバタバタと慌ててすっ飛んできたのは、友美さん。

「うん、平気。ってか、『心配してた』って初めて言われたよ!」

友美さんが目を丸くする。

「ええ?昨日恭平が病院に行ったでしょ?アイツは言ってくれなかったの?」

「父ちゃん、来たけどね~。実の親は何も心配してくれなかったよ!それどころか、怒られてイヤミまで言われた」

「ふふふ、恭平らしいわね!でも、まぁ安心したわ、たいしたケガじゃなくて」

友美さんは目じりにしわを寄せホッとした笑顔を見せると、また店の奥のミシン台に戻り、アイボリーのレースの布を広げた。


「友美さん、できたの?オーダーのウエディングドレス。」

ガシャガシャとミシンが動き始める。

「ん~、もうちょっとかなぁ」


友美さんの店は“あんていく”の名の通り、店内がアンティーク調で統一されていて照明も薄暗い。

あまりにも地味な外見なので、通行人は気付かないまま通り過ぎてしまうだろう。

でもオレは、ほのかに木とアロマの香りがするここが好きなんだ。

子供の頃から。
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