待ち受けカノジョ。


「だぁっ!もうイヤっ!!」


滝山くんのガマンが爆発したのは、42通目を過ぎた時。


「奈緒さー、オレがどんどんボタン押すから、読んでくんない?」


え?ここで私に丸投げ?


「昨日録画したアニメ見なきゃいけないんだよね~」

「ええ!?」

私に来たメールじゃないんだから、関係ないっての!

それに、アニメ『見なきゃいけない』って使命感は何なのよ!?


「じゃ、なんか大事な事が書いてあるメールがあったらストップって言ってね」


私の返事を待ちもせず、滝山くんはさっさとテレビの前にドッカリ座ってしまった。


「さて!見るぞ見るぞぉ~」


チャ~ン、チャチャ~ンと曲が流れ始め、そのリズムに合わせて楽しそうに首を左右に揺らす……


オタクが一人。



「♪め・く・るっ!めくめくぅ~イェイ」


なんだ?この歌。

そして、なぜ踊る?


もはや“イケメンチャラ王子の滝山くん”はどこにも存在しない。


目の前にいるのは、若干キモい、ただのオタク。


これが―――

滝山くんの、正体。
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