糖度∞%の愛【編集前】
そんな私の視線に気づいていたらしい彼方はお弁当から視線を外すことなくそう言って、私も急いでご飯を口に詰め込む。
「嘘です、ゆっくり食べてください」
リスのように口にいっぱい詰め込んだ私をようやく見てくれた彼方が、笑みを浮かべながらそう言ってくれたから、さっきの彼方の部署での微妙な雰囲気が少しだけ払しょくされたような気がしてつられて笑った。
彼方にはお酒の席での醜態も、何もかも知られているからこんなにものを口に詰め込んだ状態を見られてもどうってことないけれど、やっぱりどこかで女らしい一面も残しておかなきゃなあとこっそり目標を立てた。
自分のすべてを知られていても、すべてを好きだと言って貰えても、やっぱり女の魅力でもって彼方を虜にしておきたいというのが年上の意地というか、最後の砦というか。
なんとか口の中のものを飲み込むと、彼方は私が口を開くより先に開口一番「すいませんでした」と腰を折って深く謝罪をしてきた。
それがさっき部署での彼方の態度についての謝罪だと分かっているけれど、言い合いになるのが嫌だと早々に切り上げてあの場に彼方を置いてきた私も大人げなかったし、悪かったのだ。
彼方が一方的に悪いわけじゃないし、今だから思うけれど私だって彼方が仕方なしに合コンに言ったと分かっていてもやっぱり嫌だと思ってしまうに違いない。
それは好きだからこその独占欲で、好きだからこそ自分以外の異性と触れ合ってほしくないと思う、それは当たり前の感情なんだと分かる。