糖度∞%の愛【編集前】
部長のにやけ顔といい、この人といい今日はにやけていなきゃいけない日なのだろうか。
そんなことを考えながら受話器を取って3番を押す。
「お待たせして申し訳ありません、お電話変わりました、美崎です」
いつものようにそう言葉にすれば、何故か電話の向こうから聞こえてきたのは耳慣れた声。
『沙織っ! どういうことだ!?』
なぜか電話口で怒っている……というより何かに驚いて気が動転しているような様子のお父さんの声。
もちろん実の父だからお父さんも美崎のはずなのに、何故か森田を名乗った父。
「……どういうことって、こっちこそどういうつもりよ。 私用の電話なら私の携帯にかけてくるべきでしょう? 偽名まで使って会社にかけてくるなんて……お父さんも一社会人なら常識くらい、」
呆れながらも一応言っておかなければ、と思って口にするのにお父さんは私の言葉を最後まで聞かずに電話の向こうからは怒鳴り声が聞こえてくる。
『俺だって非常識なことくらい言われなくても分かってるけどなぁ! これはこのおと、』
まだまだ続きそうなお父さんの文句をぶった切ったのは、電話口の向こうにいるお母さんだ。
微かに『お父さん、落ち着いて話さないと。 沙織だって何も知らないんでしょうし』となぜか怒っているお父さんに反してほのぼのとした口調で諌めている。