糖度∞%の愛【編集前】


「沙織、こっちに座りなさい」


唖然としている私にリビングからお父さんが厳しい声で私を呼ぶ。

はっきりいって今それどころじゃなくて、彼方に問い詰めたいのに私が口を開くより先に「沙織」とさっきよりもトーンの低くなった声が催促する。



「ほら、料理が出来上がるまでまだ時間があるからお父さんのところ行きなさい」


促しているようで有無を言わせないお母さんの後押しを背に、私はおずおずとお父さんの座るソファへ行って、やっぱり微動だにしないお父さんと向かい合う。



一切動かないで腕を組むお父さんが視線だけ動かしてまっすぐに私を射抜く。



え、なんでこんなにお父さん怒ってるの?

初めて門限破った時、玄関で仁王立ちして待ち構えていたお父さんと同じ顔してるんですけど。


ひやり、と背中に汗が流れるような感覚がして、視線だけをお母さんに向けて助けを求めてみるけど、お母さんは隣にいる彼方と楽しげに談笑しながら料理をしていて私の視線に気づいてもくれない。


しかも視線を反らしたことがお父さんにばれて、「沙織」と静かに名前を呼ばれた。

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