糖度∞%の愛【編集前】
お父さんは昔から礼儀にうるさい。
ありがとうやごめんなさいはもちろん、あいさつや話をするときにはその人の目を見てちゃんと話すことを小さい時から教えられてきた。
だからこそこれがちゃんと目を見なさい、ということだとわかるんだけど……。
「お父さん、あの……」
「五月女彼方、アイツが来たのは今朝だ」
私の言葉を遮ったお父さんが教えてくれた事実に頭を抱えたくなる。
一緒に出社したはずなのに、どうして朝からウチに来てるのよ。
わざわざ一緒に会社に行ったあと、ここに来たっていうの?
文字通り頭を抱えた私を気に留めるでもなく、お父さんはまっすぐ私を見ながら言葉を続ける。
「玄関を開けるなり名乗られて履歴書を渡された」
「履歴書?」
「これだ」
首を傾げる私に差し出されたのは、本当に履歴書だった。
ちゃんと顔写真まである。
生年月日に血液型、住所に経歴から持ってる資格、趣味や特技、本当にすべて書き込んであってこのまま会社の面接に持って行ってもなんら遜色のない仕上がりだ。
もうぽかんと間抜けに口を開けてそれを眺めていると、お父さんは今ここに彼方がいる経緯を話し続けてくれる。