糖度∞%の愛【編集前】
「沙織の身体のことは知ってるのか」
頭を下げ続ける彼方に向けて言ったお父さんの第一声はそれだった。
「沙織がこの病気だと分かったのは2歳になったばかりのころだった」
語り始めたお父さんに、彼方は顔を上げてまっすぐお父さんの方を見つめて、お母さんは昔を思い出すように優しい顔でお父さんをそっと見つめている。
「初めて聞く病名に戸惑って、娘に注射を打つことにも戸惑って、その病気でいじめられてる娘を支えるしかできないもどかしさに母さんと二人で泣いたこともある」
それは私ですら知らなかった事だった。
そして学校でいじめられていることを二人に話したことはなかったのに、知っていたことにも驚いた。
「今は沙織はいい大人で、自分のことは自分でできるけれど私たちにとってはいつまでも大切な娘だ。 娘が傷つけられるのだけは避けたい」
じっと視線を合わせたまま逸らすことのないお父さんと彼方は、言葉の裏で一体何を伝え合っているのか男じゃない私には分からないけれど、それでも分かることは一つだけ。
お父さんも彼方も、私のことを大切に想ってくれているということ。