糖度∞%の愛【編集前】
「俺が、沙織さんの病気を知ったのは告白する一年前でした」
お父さんの話に応えるように、語りだした彼方。
「病気のことも自分なりに調べて、そのうえで沙織さんを守っていけるのか、支えていけるのか、ずっと隣にいたいと思えるのか、一年かけて考えてそれでも俺の気持ちはずっと変わらなかったから告白したんです」
それは私も知っているようで、知らなかった彼方の葛藤。
「正直知識として知っているのと実際見るのとのギャップに戸惑ったりもしました。 それでも好きな人がそれと向き合って、一生付き合っていくんだと思ったら、それさえも愛しく思えて……もっともっと沙織さんが好きになったんです」
引き結ばれたお父さんの口元が、更にぎゅっと力がこもったような気がした。
お母さんは微かに口元に笑みを浮かべながら、静かに涙を流している。
「一度、俺のふがいなさで沙織さんを傷つけたこともありました。 それでも沙織さんは俺を許してくれて、こんな俺を好きだと言ってくれるんです」
じっとお父さんを見つめる彼方の胸に、飛び込んでちからいっぱい抱きつきたい衝動に駆られた。
好きだと、愛してると、自分に言われるよりも、こうやって自分を育ててくれた両親にまっすぐ想いを伝えてくれていることの方が、ずっとずっと嬉しくて。
「俺はそんな沙織さんを、心も身体も、名字もすべて、自分のものにしたいんです。 ご両親からも奪い去って自分のすべてで沙織さんを幸せにしたい、沙織さんに俺を幸せにしてもらいたい」
多分、私は後に続くお父さんの言葉をきかなくちゃいけなかった。
それでも、私はもう我慢できなくて彼方の首に腕を回して抱きつきながら飛びついた。