糖度∞%の愛【編集前】
そして、たっぷり間を開けたお父さんがやっと口を開いて、
「とりあえず五月女君はちゃんと沙織に結婚を申し込め。 話はそれからだ」
それだけ言うとキッチンの前にある食卓テーブルの所定の位置にドカッと座って、「美佐子メシ」とお母さんに食事の要求をした。
お母さんもそれに「はいはい」と返事しながら立ち上がって、まだ床に倒れこむ彼方と座り込む私へと視線を移した。
「彼方君お料理運ぶの手伝ってくれる? 沙織は血糖測定しちゃっておいてね」
落ちた箸もちゃんと拾ってね。 そう言いながらキッチンへ向かって、彼方も「はいっ」と元気のいい返事をしてお母さんについていくから、私も言われるがまま測定することにした。
用意をしながら考えるのは、さっきの出来事。
彼方の言葉。
お父さんとお母さんの気持ち。
それから……、あれ?
これって結婚する流れになってる?
お父さんが言ってたことってつまり、彼方が私にプロポーズしてからなら許すってことで。
……私は私で彼方じゃないと嫌だって言ってもう返事は分かっているようなものなのに。
つまり返事も分かってて、プロポーズされるのを待つってこと!?
すっごい恥ずかしい……。
思わずソファに突っ伏してしまう。
(それでも、彼方が結婚を考えてくれていたことが何より嬉しい)
(どんなプロポーズでも)
(答えなんてひとつしかない)