糖度∞%の愛【編集前】



彼方のこんなにも切羽詰まったような、緊張した面持ちを見るのは久しぶりかもしれない。




告白してきたときは余裕のある態度だったけれど、あの受付嬢の一件ではこんな顔をしていた。


もっともあの時は悲痛な感じが強く出ていたから、今の状況とは違うけれど。



それでもなんだか今更だけれど彼方の緊張が移ってきてしまって、私が声をかけたことによって視線を向けた彼方と目が合ってふよふよと視線を不自然に泳がせてしまった。



「……チーズケーキ、食べていい?」


そして出た言葉は言いたかった言葉とは全く違うもの。


確かにチーズケーキは食べたかったけれど、それでも言いたいことは違った。

“どうしたの?”って一言言いたかったはずなのに、どうしてこんな急に緊張が張りつめてしまったのか。

「どうぞ」とチーズケーキを食べることを了承してくれた彼方に促されるまま、中央の皿からチーズケーキを取ってフォークで切って口に入れる。

想像以上に美味しいはずのケーキは、緊張で味が分からない。


さっきまでは、食事を食べながらいつ言ってくれるのだろう、どんな言葉をくれるんだろう、緊張して可愛いな、なんて余裕だったはずなのにここにきてこんなに緊張するなんて、バカじゃないの私。



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