糖度∞%の愛【編集前】
自分でもわかるくらいだから、もちろん目の前にいる五月女にだって分かったはずで、私の顔色の変化を見たとたんに、さっきまで神妙な面持ちだった顔が、ニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
「沙織さん、」
言いながら距離を詰めてくる。
それに気づいて慌てて一歩下がろうとする足を、意地でその場に留めた。
私は一応コイツの上司で、しかもこんなことで逃げようとするか弱い女だと思われるのは、プライドにかかわる。
「返事、」
大きな手がスッと伸びてきて、頬に添えられる。
その瞬間に一瞬ビクリと震えてしまったのは、仕方ないと無理やり自分に言い聞かせる。
じゃないと、今すぐにプライドも何もかも捨ててこの場から逃げ出したくなってしまう。
「聞かせてくれませんか?」
言葉は丁寧なはずなのに、どうしてか変な威圧感を感じるのは気のせいだろうか。
カラカラになった喉を潤すために、唾をごくりと飲み込む。