糖度∞%の愛【編集前】
どうしよう。
今までのパターンなら、とりあえず付き合うのをオッケーしていたけど。
コイツと付き合えば、私はどうしようもなくコイツにハマる予感がする。
ううん、きっとハマりにハマって、抜け出せなくなって、いつか別れを切り出されたときにみっともなく縋り付いてしまうくらいに好きになる。
そんな情けないんだか、ある意味体験したいんだか、よくわからない確信があるからこそ、一歩を踏み出すのを躊躇してしまう。
そんな葛藤を見透かしたかのように、頬に添えられていた手がスルリと撫でるように下に下がり、綺麗な親指が私の下唇に触れた。
この2年間浮いた話がなかったのがウソに思えるほど、それがとても手慣れたしぐさなんだとわかるくらいに自然に。
こいつ、周りにばれないようにうまく遊んでたんじゃないだろうか、しかもそれなりの場数をふんでいるんじゃないの? なんて変な勘繰りをしたくなるほど、なぜだか目の前の男の過去に少しだけ嫉妬したりしてる自分がいる。
「沙織さん」
何回目かわからない“沙織さん”と私を呼ぶ声。
少しだけ掠れた懇願するような声でさえ、意図的に作られたものなんじゃないかと勘繰ってしまうほどに、私は五月女の過去がとても華やかなものだったのだろうと思ってしまっている。