糖度∞%の愛【編集前】
無言の訴えに今気づいた風に「食べたかったですか?」と白々しく聞いてくる彼方が、確信犯だということはもうわかっている。
「いいわよ、私はこっちを食べるから」
言いながらいかの一夜干しの残った数本を一気に箸でつまんで口に頬張ると、一瞬目を丸くした彼方は声を上げて笑い出す。
「…なによ、」
もぐもぐといかをかみ砕きながら睨みあげると、お腹を抱えながら彼方は「沙織さん、さすがっ!」と、プライベートでは最近聞かなかった“さん”づけで、よくわからない褒め方をした。
さすがって、なんだ。
全然褒められた気がしない。むしろバカにされた気がする。
その不満を隠さずに、むすっと膨れると「いや、可愛いです」と、やっぱりよくわからない褒められ方をされてしまった。