糖度∞%の愛【編集前】


「鳥肌立ってるのに?」

「寒くないから」


あくまで同じことしか言わない私に、彼方はただ黙って顔を険しくしただけだった。

そこで追求が終わったと安心しかけたとき、パチン、と少し力の入った両手で頬を挟まれた。

唇がむぎゅっとタコみたいになって、今の私は相当不細工になっていると思うのに、彼方はそんな私と視線を合わせているにもかかわらずクスリともしないで、本気で怒っている。


「……か、かなた?」


頬を両側から挟まれてるせいでうまく発音できない私に、彼方の怒声が飛ぶ。


「風邪ひいたらどうするんですかっ!? ただの風邪だって、沙織には致命的な原因になることだってあるんですよ!?」

「っ、」


そう、体調を崩したり、風邪をひいたりしただけで、血糖は不安定になる。

食べ物が食べれなくなれば、その分インスリンも減らさなくちゃいけない。

風邪などをひいた日、つまりシックデイには血糖の変動に十分注意しなければならないのだ。
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