糖度∞%の愛【編集前】
やっぱりいつもの食堂で、真帆は今日のA定食のブリの照り焼きを咀嚼しながら彼方の話題を口にした。
「……だーりん、て……」
苦笑いしか返せない。
そこで“そうなの、私のダーリンって最高でしょう?”なんて言うべきなんだろうか。
でも、そう返したら返したで真帆に本気で絞められそうな気がする。
「顔よし頭よし性格よし、世間でいう三高以上の有望株を彼に持つ心境はどうですか?」
箸をマイクのようにもって私の口元に持ってくる真帆の目は、笑っているようで笑っていない。
「……誠に幸せでございます」
嘘偽りのない言葉を淡々と述べれば、真帆に呆れたように鼻で笑われた。
「あーぁ、五月女みたいな男どっかに転がってないかなー?」
でも私年下は範囲外なんだよなー、とぶつぶつこぼしながらブリをつつく真帆は、誰が見ても可愛いのにその見た目と中身のギャップに世の男性はガッカリするらしい。
私はその見た目の可愛さに反して、中身が男っぽくてサバサバしている真帆が大好きなんだけど、だれか彼女の良さをわかって幸せにしてくれる人が早く現れてくれないかなぁ、なんて思いながら私は自分のB定食のアジフライに手を付けた。
それを口に入れるか入れないかの時、真帆が視線をよそに向けて思わずといったように「あ、」と言ったから、それにつられてそちらに視線を移して、私は箸で持っていたアジフライをポトリと落としてしまった。