糖度∞%の愛【編集前】
「沙織さんって料理うまいですよね」
今日は私の家で夕飯を振る舞った。
また“沙織さん”ってさん付けしてる。プライベートでもたまにさん付けされるとなんだかムッとしてしまうくらいに、彼方は私の中の中心にいる。
「私よりも真帆の方がうまいわよ」
言いながら自分の作ったブリの照り焼きを机に並べた。
昨日のお昼に真帆が食べてるのを見たら、食べたくなってしまったのだ。
食卓に並んだメニューを見てカーボをざっと頭で計算しながら注射を用意する。
注射といっても見た目は少し大きなペンのようにしか見えない。
キャップを外してアルコール綿で消毒して針を取り付け、中の空気を抜く空打ちをしてから必要な分の単位だけダイヤルを回して太ももに刺して注入。
もう彼方の前では隠れることなく堂々と打つようにしている。
初めて目の前でやった時も動じることなく、ただまじまじと私の手元をじっと見ていた。
その視線にも慣れた今では、何か関係ないことを話しながらもインスリンを打っているんだけど、毎回この体勢は慣れることはない。