糖度∞%の愛【編集前】


「……彼方」

「なんでしょう?」

「離れてくれないかな?」


ストレートに言ったにもかかわらず、彼方は「なんでです?」と心からわかっていない風な声を出した。


「なんでって、ねぇ?」

「ねぇと言われても、俺にはさっぱり分かりません」


言いながらお腹に回されている腕にぎゅっと力がこもって、もともと隙間なんてなかった二人の身体がさっき以上にくっついた。

首筋にかかる吐息がくすぐったいし、なにより座っている後ろから抱え込むようにして抱きしめられているこの体勢は、本当にいくら経っても慣れない。

ドキドキしすぎて変なとこに針を刺しそうで怖い、……刺さないけど。


「……もういいわよ」


いつものごとく、私が先に折れてその体勢のまま食欲をそそる照りをしたブリに箸をつけて、味わいながらも素早く食べ終えた。

それでもいつもより早く折れた方だ。 これ以上粘っていると、昨日のお昼に見てしまった光景を追求しそうだったから。

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