糖度∞%の愛【編集前】
「なんなんだかね、アレは……」
私の視線の先に気付いた真帆が、ため息まじりに呟くけれど返事をすることができない。
いますぐに彼方のもとに行って、あの女の子の腕を振り払って“彼方に触らないで”と言えたならどんなにいいだろう。
きっと彼女である私にはその権利がある。
でもそれをすることができなくて、私はただ静かにポタポタとテーブルに落ちる涙を滲む視界に入れていた。
「あんたも、そんな風に泣くくらいならちゃんと聞きなって」
綺麗にアイロンのかけられた白いハンカチを目元に添えられて、「ありがとう」と小さく呟いてそれを受け取る。
聞けない。
それで心変わりしたと彼方から告げられて、離れていかれたら私はもう立ち直れない。
彼方を諦めることなんてできない。
フラれてもバカみたいに彼方を好きでい続けるに違いないから。
「信じてやりなって言いたいけど、アレを見せられちゃかばう気もなくなるわ」
フンと鼻を鳴らして頬杖をつく真帆を、ハンカチで目元をおさえながら見ると、綺麗な顔を見事にゆがめていた。