糖度∞%の愛【編集前】
食堂であの子と腕を組んで現れる前まで、いつもと変わらない笑顔を向けてくれていたはずなのに。
どうしてこうなってしまってるんだろう。
「沙織?」
「女の子が、出た」
「……あの子?」
それにコクリと頷く。 そして「彼方シャワー浴びてるって言ってた」と情けなく震える声で零すと、「あの子の嘘かもしれないでしょう?」と私も思ったことを真帆も言う。
それでも、それでもね。
「電話の向こうで彼方の声がした」
「2人きりじゃなかったかもしれないわ」
そうだけど、たしかにそうだけど。
それでも……。
「どうしよう、真帆」
「……どうしたのよ」
「涙が、出ない」
悲しいのに、辛いのに。
なぜだか涙が出てきてくれなかった。
ただ震える手をぎゅっと胸元で握りしめた。
(泣きたいのに、泣けないなんて……)
(ねぇ、)
(離さないんじゃ、なかったの?)