糖度∞%の愛【編集前】
そんな条件呑めないとその場を後にしようとした俺の腕に、縋り付いてきたその女の手を振り払った瞬間、「きゃ」と声がした。
それにうんざりしながらも振り返ると、そこにはうずくまる女。
振り払ったせいで足をくじいたらしい。
一瞬演技かとも思ったけど、彼女の押さえている右足首は赤く腫れていて、演技でないことを知ったと同時に厄介なことになったと頭が痛くなった。
案の定彼女は“足が治る間、お昼を一緒にとってください”という変なお願いをしてきて、断ろうとした俺を見越したかのように“まさか断らないですよね? こうなったの早乙女さんのせいですもんね?”とたたみかけてきたのだ。
常識がなくて空気が読めなくて性格の悪い女は相当厄介だ。
それからは、あれよあれよという間に、沙織が離れていった。
説明すらさせてもらえず、正直どうしていいのかお手上げ状態で。
「それ、返してください」
喫茶店の席に座って右手を差し出すけど、背中に隠された携帯を返してくれるそぶりは全くない。
「返したら、まだお昼一緒してくれます?」
まだそんなことを言うコイツに、本当に呆れる。
彼女の足首はもうすでに治っているし、これ以上する必要は全くない。