糖度∞%の愛【編集前】
「いいから返せ。 もう俺と沙織さんにかまわないでくれません?」
「何がそんなにいいんですか? 私の方が若いし、綺麗じゃないですか」
全然かみ合わない質問をされて辟易しつつも、ひとつ溜息をついて自分を落ち着かせてから、
「若いとかきれいとか、関係ないんですよ。 沙織さんだから俺は好きなんです。 あなたは沙織さんじゃない、その時点で俺はあなたを好きじゃない」
「っ、」
あの人の好きなところを、簡単に教えてたまるか。
理由を教えるのは沙織にだけだ。
彼女にしかこの想いを伝えられない。
「だから返してください」
もう一度催促すれば、意外にも彼女はしぶしぶとだけど返してくれた。
すぐに着信履歴を見れば、待ちに待っていた愛しい人の名前。
つまりコイツは久しぶりの電話に勝手に出た挙句、絶対に余計なことを言ったに違いない。
定時少し過ぎで上がってから約3時間近く、嫌になるくらい粘られて、もううんざりしていた。
でも帰らなかったのは、今日で決着をつけたかったから。
いい加減コイツの存在が嫌で、逆に離れていく沙織にどうしようもないくらいの不安が押し寄せてきたから。