糖度∞%の愛【編集前】
じとっと睨みつけると、びくっと身体を跳ねさせて泣きそうに眉を歪めた。
そんな顔されても、何とも思わない。
泣き顔を可愛いと思うのは沙織だけだ。
涙を拭いてあげたいと思うのも沙織だけだ。
「だって、悔しかったんだもん…」
理由にならない言い訳をしながらポロポロと涙を零す彼女に、もう言葉をかける気すら起きない。
すぐにリダイヤルしてみたものの、耳に聞こえてくるのは無機質なアナウンスだった。
「……沙織さんに何を言った?」
「…………、」
「もう一度聞く、何を、言った?」
ゆっくりと尋ねれば、彼女は喉を震わせて「ぁ、」と小さな声を出してから、
「彼方君は、いま、シャワーを、浴びてる、って……」
泣きながら片手で口元を抑えて言った言葉に、一瞬にして目の前が真っ赤に染まる。
コーヒーの置かれたテーブルを蹴り飛ばしたい衝動を抑えながら、「二度と俺と沙織さんに係わるな」と同じ言葉を言い捨てて、喫茶店を後にした。