糖度∞%の愛【編集前】
でも、その二人がどこにいるのかも、藤城さんの家も分からないのにただひたすらに歩き続けた。
本当だったらじっとしていたほうが行き先が決まった時に行きやすいのは分かっていたけど、じっとなんてしてられなかった。
『携帯にあの女が出たのは?』
「携帯を喫茶店のテーブルに置き忘れた俺の不注意です。 喫茶店じゃシャワーなんか浴びれません」
『喫茶店にいたって言う証拠は?』
「レシートがあります。 なんなら店に電話して確認していただいても構いません。 結構言い合ってたので店員も覚えているはずです」
『……、会社よ』
藤城さんがそう言って俺の返事も待たずにその電話は切られた。
タイミングがいいことに、俺が今歩いていた方向も会社の方だった。
今から全力で走れば5分もかからないでたどり着く。
「ありがとうございます」
口にした感謝の言葉は、最後まで聞かれることもなく途中で無情にも切られてしまったけれど、伝えきれないほどの感謝を藤城さんにした。
(まっすぐ向かうのは、君のもと。)
(何度でも謝るから)
(泣かせた分だけ、傷つけた分だけ
抱きしめさせて。)