糖度∞%の愛【編集前】


震える手の中の携帯をぼんやり眺める。

電池パックのとれたそれを、直す気力すら湧いてこないで、ただ無心でそれを見つめていた。

さっき少しだけ席を外していた真帆も、戻ってきてからはただ傍にいてくれていた。


何も言うことなく、何も聞かないで、ただ傍にいてくれた。

それが何よりも嬉しくて、「ありがとう」と何の前触れもなくポツリと呟いた私に、「なにが?」と照れ隠しにとぼけてくれるのにも思いやりを感じる。


真帆がいてくれてよかった、と心から思う。

真帆がいてくれるから、泣けなくてもこうやって取り乱すことなくいられるから。


心の中の黒いもやを吐き出すかのように、深いため息を一つ吐いて、天井にある安っぽい蛍光灯を見つめる。

その瞬間、くらっとめまいがする。

瞬きせずに見つめたら涙は出てくるだろうか、とそうしてみたけどただ目が乾くだけで全然涙が出てくる気配はない。


どうして涙まで素直じゃないんだ。


思わず突っ込みたくなるほどに、涙は全く出てこない。

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