糖度∞%の愛【編集前】
だってとっくに許したくて仕方なかった。
その機会を自分でなくしていると分かっていたけど、素直に言えるほど大人じゃなくて。
年上だからこそ、意地を張ってしまっていた。
これが私のできる、最大限の譲歩だ。
それでも、そんな些細なことさえできなかった私は、やっぱりこの恋にあり得ないくらい溺れているんだろう。
やってみれば、“なんだ、こんなに簡単なことだったのか”と思えるくらいに呆気ない終末なのに。
それすらできなかったんだから。
でも、ここまでの自分の葛藤や辛さや苦しみすら、今はよしと思えるのは伊達に年をとっていないからなんだろう。
目の前で未だ間抜けに呆けている彼方のほっぺを力の限りに引っ張って、私は久しぶりの笑顔を浮かべた。
「本当に、すいませんでした」
そんなある意味すがすがしい気持ちでいた私に、頬を引っ張られている彼方は真摯にもう一度謝罪の言葉を口にしてくれたから、余計に嬉しくなる。
「もう二度と、他の女に触らせません。 何があっても」
「そうね、彼方は頭のてっぺんからつま先まで私のものなんだから。 当たり前ね」
「よ! さすが沙織! オットコマエー!」
相変わらず頬を引っ張られたままなのに、真顔でそんなことを誓う彼方に、これでもかってくらい自己中な発言をした私は真帆に囃し立てられて、そんな私たちを見てやっと彼方は笑みを浮かべた。
(こうやって笑い合えれば、もうなんだっていい。)
(笑い合って、抱きしめ合えれば)
(もうそれだけで幸せになれちゃうから)