scar-傷痕-
「…見たんですか?」
お風呂から出てきたあたしは真っ先に尋ねた。
心に憑いたモヤモヤが煩わしくなったからだ。
気にしないようにして気にしていたあたしのモヤモヤ度はMAXに達していた。
「何を」
「だから、その…」
対して神田さんはしれっとしている。
この男、本当に心当たりがないのか?
分からないフリをしてるんじゃないだろうな。
気恥かしさと苛立ちがどんどん募っていく。
それと比例して濡れたままの髪を拭くタオルの動きが乱暴になっていた。
「これ」
ようやく言葉にしなくても神田さんに意図を伝える方法を見つけて一旦シャワールームに戻る。
さっき八つ当たりした紺色のパジャマを押しつけると彼は眉間にシワを寄せた。
「…酒臭かったから着替えさせたんだよ。なんか文句あんのか?あ゛?」
「……それは、その、ありがとうございました」
ぺこりと改めて頭を下げる。
でもそれとこれとは別だ。
「で、見たんですか?」
「……………」
なんでいちいちそんな事を聞くんだよと言いたげにあたしを睨みつけた神田さんは小さく頷いて肯定してみせた。
あぁ、やっぱり見たんだ。