scar-傷痕-



「失礼します。宮下さんいよいよ退院――、あら、優奈ちゃん」


訪れたのは見慣れた看護師さん。
あたしとお母さんを交互に見つめて口を開いた。


「優奈ちゃん車で来てたでしょ。いつの間に免許取ったの?」


娘さんの運転した車に乗れるなんて、いいですね。
看護師がそう続けた瞬間空気が凍った。

どうして。
どうしてうまくいきかけてたのに邪魔をするの。


背筋がぞっとして退院手続きの説明が耳に入ってこない。
お母さんはまるで人形のように無表情になった。

なんて言い訳しよう、
あたしの頭はそれだけを考える。


「どういうこと」


看護師が出て行くとお母さんの苛立ちが爆発した。
苛々した口調で詰め寄られる。


「お母さ、…ッ!?」


優しい手つきで撫でられていた髪の毛を引っ張られ小さな悲鳴があがる。

あたしは誤解を解くのに必死だった。
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