scar-傷痕-
着いたのは進路指導室。
書類だらけで埃っぽい部屋に連行される。
――カチャリ
「なんで鍵閉めるんですか」
「聞かれたらまずいんだろ?」
「…」
逃げ場を失った。
面倒臭い。
あたしの考えを察したのか神田先生は『逃がさねーぞ』と宣言した。
「それで、用はなんですか」
「とぼけるつもりかよ。お前あの夜あの店で働いてたキャバ嬢だろ」
出た。
予想が当たって減なりする。
「…言っている意味がわかりません」
「愛里だろ」
「…」
それを知ってどうするんだろう。
謹慎処分にでもするのかな?
先生だってああいう店に出入りしてたのが広まったらまずいくせに。
「!」
そこまで考えて思い付く。
この状況を覆す方法を。
「確かに私は一夜だけ愛里になりました」
「やっぱりな…」
「そして確かにあの夜、先生はキャバクラに来ました。――年上の男の人と一緒に」
ぴくり
「あ゛?」
あたしの淡々とした口調に神田先生の顔が引き攣る。