影姫月蝶−カゲヒメゲツチョウ−
疑問
次の日の夜、私は優雅な着物からみすぼらしい着物へ着替えた。
そして、見張りの少ない裏扉から足音をしのばせ城を出た。
私はまっすぐ北の都へと向かった。
夜分の為、着物のおくに小刀をしのばせた。
しばらく急ぎ足で足を進めると…
私には想像を絶する光景が広がっていた。
豊かだった町並みは荒れ果て、所々には柱の残骸などが散らばっていた。
「何…これ…」
そして建物の裏などには見るからに悪い輩や、家を無くしたであろう方々が佇んでいた。
町並みは暗い、夜さえ明るかった都は面影さえ無かった。
私は静まり返った道を一人歩いた。
とりあえず知り合いをたどろうと橋まで向かう。
すると…
「おぉい、お嬢さんよぉ…ここの橋を渡るにゃあ金が必要だぜぇ?」
身なりからしてあまり良くら思えない男達に囲まれる。
金なんて…今は手元にない。
「…わかりました…」
私は短く返事をすると、向こう側の橋へ向かった。
その時、
「向こうの橋も同じだぜ?俺の仲間が居るからなぁ…」
いかがわしい笑い声と共に男が肩を掴んで来た。
「何も渡らせねぇって言ってる訳じゃねぇ」
「離して!」
「金がねぇなら…どうすりゃいいかわかるだろ?…てめぇみてぇなガキでもなぁ!」
私は着物の奥に忍ばせた小刀に手をかけた。
「やめとけぇ…雌ガキが使うにゃ早いだろぅ?」
妖しく笑いながらどんどん歩を進めてくる男に私は少し怯んでしまった。
私の肩に置かれている手に力が入る。
「あぁうっ!離し…て!」
「そりゃ無理な願いだ」
私は冷たい土の上に押し倒された。
そして男は覆い被さってくる。
「ここの都にゃ女が減ったからなぁ!こんな所に女がいて手を出さねぇ奴ぁいねぇよ!」
「離して!!」
私は…家族を奪った奴に復讐するんだ…。
こんな所でこんな奴に犯されてなんていられないんだ…!!
私は押し倒された時吹き飛んだ小刀に手を伸ばした。
あと少し…!
男は息をあらげ私の体を撫でまわす。
あと…少しで…!
私は小刀を勢いよく掴み男の首に滑らせた。
「うあぁぁぁぁぁっ!」
叫び声が響く。