蒼の王国〜金の姫の腕輪〜
‡〜姫君の馬車〜‡
ようやく王都に着いた。
しかし、肝心の門を開ける術がない、と考えていた矢先だった。
今まさに門の内側へと入って行く、いけ好かない何とか騎士団が偉そうにふんぞり返りながら『開門っ』と声を上げるのを見てすぐさま駆けた。
連れているのは快一人。
子ども連れのこちらとは違う服を着た男では、怪しまれるのは当然で…。
上から目線の物言いと、昔の貴族嫌いとが合間って、気付いた時には、全員あっさりと地に沈めていた。
運良く開きかけていた門の隙間から入り込むと、予想通り門番逹が待ち構えている。
「どうすんだ?柚月」
どうするもこうするも、突破しなければ城に向かえない。
命令系統がしっかりしていれば、このあとも城までの道のりに何人か軍の人間が配置されてしまう。
迷っていて良いことはないかと決意した時、それはいきなり突っ込んできた。
いつもなら憎まれ口の一つも吐くその快も、今は棒立ちになってその人を見ている。
「そなたらはリュスナ姫の連れではない?」
馬車の御者台から手綱を引いて訪ねてくるのは一人の女性だった。
長い金の髪も美しく、成熟した大人の女性の洗練された優美な物腰。
上流階級の令嬢の様な穏やかな物言い。
「どうしたの?」
たった今馬車で撥ね飛ばした門番逹の事など、存在していなかったような態度で普通に話してくる様は、物凄く身近なある人を思い起こさせた。
「っあ…いえ…っはい…かつて、リュスナと呼ばれていた方を追ってきました」
「そう…やはり…。
彼女が今何処にいるか分かるかしら?」
「おそらく、城へ向かわれたかと…精霊王の聖具を届けるようですので…」
「なら、あなた方もお乗りなさい。
わたくしも今から城に向かいます。
一緒に来てください」
「っよろしいのですか!?」
「勿論。
それに…そっちの子に話したい事もあるの…マーク、代わってちょうだい」
「姫様…いえ…分かりました…」
「この後は通常の速度で大丈夫だから」
そう言って御者台からヒラリと降り、代わりに馬車から降りてきた青年と入れ違うように乗り込む。
未だに硬直している快を見て、手を引き馬車へと乗せ、女性の前へと並んで座る。
ゆっくりと馬車が動き出すと、真っ直ぐにこちらを見て言った。
「そういえばまだ名乗っていなかったわね。
わたくしはセイレン国の第一皇女、フェリス・エル・セイレンです。
お名前お聞かせ願えるかしら」
ようやく王都に着いた。
しかし、肝心の門を開ける術がない、と考えていた矢先だった。
今まさに門の内側へと入って行く、いけ好かない何とか騎士団が偉そうにふんぞり返りながら『開門っ』と声を上げるのを見てすぐさま駆けた。
連れているのは快一人。
子ども連れのこちらとは違う服を着た男では、怪しまれるのは当然で…。
上から目線の物言いと、昔の貴族嫌いとが合間って、気付いた時には、全員あっさりと地に沈めていた。
運良く開きかけていた門の隙間から入り込むと、予想通り門番逹が待ち構えている。
「どうすんだ?柚月」
どうするもこうするも、突破しなければ城に向かえない。
命令系統がしっかりしていれば、このあとも城までの道のりに何人か軍の人間が配置されてしまう。
迷っていて良いことはないかと決意した時、それはいきなり突っ込んできた。
いつもなら憎まれ口の一つも吐くその快も、今は棒立ちになってその人を見ている。
「そなたらはリュスナ姫の連れではない?」
馬車の御者台から手綱を引いて訪ねてくるのは一人の女性だった。
長い金の髪も美しく、成熟した大人の女性の洗練された優美な物腰。
上流階級の令嬢の様な穏やかな物言い。
「どうしたの?」
たった今馬車で撥ね飛ばした門番逹の事など、存在していなかったような態度で普通に話してくる様は、物凄く身近なある人を思い起こさせた。
「っあ…いえ…っはい…かつて、リュスナと呼ばれていた方を追ってきました」
「そう…やはり…。
彼女が今何処にいるか分かるかしら?」
「おそらく、城へ向かわれたかと…精霊王の聖具を届けるようですので…」
「なら、あなた方もお乗りなさい。
わたくしも今から城に向かいます。
一緒に来てください」
「っよろしいのですか!?」
「勿論。
それに…そっちの子に話したい事もあるの…マーク、代わってちょうだい」
「姫様…いえ…分かりました…」
「この後は通常の速度で大丈夫だから」
そう言って御者台からヒラリと降り、代わりに馬車から降りてきた青年と入れ違うように乗り込む。
未だに硬直している快を見て、手を引き馬車へと乗せ、女性の前へと並んで座る。
ゆっくりと馬車が動き出すと、真っ直ぐにこちらを見て言った。
「そういえばまだ名乗っていなかったわね。
わたくしはセイレン国の第一皇女、フェリス・エル・セイレンです。
お名前お聞かせ願えるかしら」