蒼の王国〜金の姫の腕輪〜
‡〜約束を〜‡
胸に飛び込んで来た彼女は思っていたほど子どもではなかった。
背も伸び、体も女性らしく美しい。
腕の中に収まった彼女は愛しくて、離れたくないと思った。
泣きながら訴えてくる言葉は、私を想ってくれていたのだと言うものが多く、益々強く抱く事に躊躇っていられなくなった。
『愛していますよ』
その言葉を口にしたのは初めてで、どこか自分ではないようなそんな感覚だった。
けれど、心からの想いが集約された言葉だと自信を持って言える一言だった。
『愛しています』
もう一度言葉にして、震える彼女の体をきつく抱き締める。
彼女がどんな決意をしたのか、何となく分かってきた。
そして、それはもう止めることなどできない程固いものだと理解できた。
だからこそ、繋ぎ止めたいと言う想いと、邪魔をしてはいけないのだと言う想いが責めぎ合う。
『っ…クルスっ…好き…。
愛してるっ。
けど私にはッ…っ』
『分かっています。
わたくしは…貴女の想いを妨げたくはない。
だから…忘れてください』
『っ…だっ…』
『ええ、分かっています。
だから術でわたくしの事を忘れてもらいます。
わたくしの存在が貴女の邪魔にならないように…』
涙に濡れた瞳を大きく開いて見上げてくる彼女に言い聞かせるように告げる。
『貴女が辛い決心をしたのなら、わたくしも同じだけの苦しみを負いましょう。
わたくしが貴女を覚えていますから…。
大丈夫…次に出会った時に術は解けます。
この国が新たな時を刻みだす時、お迎えに上がります。
それまで…しばしの別れです。
次にお会いしたら、もう一度誓わせてください。
お傍にいる事を…』
彼女は一度顔を伏せ、涙を拭った。
次に顔を上げた時には、瞳にいつもの力が戻っていた。
『戻ってくるから。
時間がかかるかもしれないけど、必ずこの地に帰ってくるから、そしたら迎えに来て…』
そうして微笑み、背伸びをして腕を巻き付けると唇が私のそれに重なった。
ゆっくり離れていくそれを逃すまいと追いかけ、今度はこちらから重ねた。
何度も執拗に重ね、幾分か紅くなった頬と唇を確認し、もう一度抱き締めた。
彼女の速くなった鼓動と、自分の高鳴る鼓動を重ねて、忘却の術を唱え始める。
しがみつくようにこちらに回された手が術の完成と共に緩む。
すっと離れた体は、一切こちらを振り向くことなく部屋から出ていった。
胸に飛び込んで来た彼女は思っていたほど子どもではなかった。
背も伸び、体も女性らしく美しい。
腕の中に収まった彼女は愛しくて、離れたくないと思った。
泣きながら訴えてくる言葉は、私を想ってくれていたのだと言うものが多く、益々強く抱く事に躊躇っていられなくなった。
『愛していますよ』
その言葉を口にしたのは初めてで、どこか自分ではないようなそんな感覚だった。
けれど、心からの想いが集約された言葉だと自信を持って言える一言だった。
『愛しています』
もう一度言葉にして、震える彼女の体をきつく抱き締める。
彼女がどんな決意をしたのか、何となく分かってきた。
そして、それはもう止めることなどできない程固いものだと理解できた。
だからこそ、繋ぎ止めたいと言う想いと、邪魔をしてはいけないのだと言う想いが責めぎ合う。
『っ…クルスっ…好き…。
愛してるっ。
けど私にはッ…っ』
『分かっています。
わたくしは…貴女の想いを妨げたくはない。
だから…忘れてください』
『っ…だっ…』
『ええ、分かっています。
だから術でわたくしの事を忘れてもらいます。
わたくしの存在が貴女の邪魔にならないように…』
涙に濡れた瞳を大きく開いて見上げてくる彼女に言い聞かせるように告げる。
『貴女が辛い決心をしたのなら、わたくしも同じだけの苦しみを負いましょう。
わたくしが貴女を覚えていますから…。
大丈夫…次に出会った時に術は解けます。
この国が新たな時を刻みだす時、お迎えに上がります。
それまで…しばしの別れです。
次にお会いしたら、もう一度誓わせてください。
お傍にいる事を…』
彼女は一度顔を伏せ、涙を拭った。
次に顔を上げた時には、瞳にいつもの力が戻っていた。
『戻ってくるから。
時間がかかるかもしれないけど、必ずこの地に帰ってくるから、そしたら迎えに来て…』
そうして微笑み、背伸びをして腕を巻き付けると唇が私のそれに重なった。
ゆっくり離れていくそれを逃すまいと追いかけ、今度はこちらから重ねた。
何度も執拗に重ね、幾分か紅くなった頬と唇を確認し、もう一度抱き締めた。
彼女の速くなった鼓動と、自分の高鳴る鼓動を重ねて、忘却の術を唱え始める。
しがみつくようにこちらに回された手が術の完成と共に緩む。
すっと離れた体は、一切こちらを振り向くことなく部屋から出ていった。