蒼の王国〜金の姫の腕輪〜
‡〜断罪の剣を〜‡
『父上。
お迎えに上がりました』
『おぉ、我が騎士よ。
何処に行っておったのだ。
はよう、あの愚かな民衆共を討ち滅ぼしてまいれ』
『父上…私は父上とお呼びしました。
もう貴方の騎士ではない。
ここにこうして立っているのは、貴方の娘としてです』
『何を言っておる。
そちは我が騎士だ。
”王の騎士”だ。
わしに子などおらん』
分かっていた。
この人は、私達兄姉や妃達の事など何とも思ってはいない。
必要なのは役に立つ者だけ。
自分の思い通りに動かす事のできる者だけ。
所詮、私もこの人の道具の一つでしかないのだ。
この人が王である為に必要な部品でしかないのだ。
『…父上…兄上や姉上、そして貴方の妃達からの遺言です…。
”共に罰を受けましょう…先に逝き待っています”と…』
『ッなっ何を言っておるのだッッ…わしはっ…わしはッ…』
『私もそう遅れては逝きません。
すぐに参ります』
何も感じなかった。
実際、父と呼べる程親しくもなかった。
だがせめて民や他の者ではなく、娘である自分が、最期を看取る者であろうと思った。
王を殺すと言う罪を…父を殺すと言う罪を、全て背負って逝こうと決めたのだ。
『お休みなさい、父上…次はどうか穏やかな人生を歩まれますように…』
誰かに恨まれる事なく、誰かを恨む事なく…そんな夢のような人生など存在しないけれど、せめて最期の時に惜しまれる人生を送ってほしい。
次の生がそんな人であってほしい。
静かに背を向け謁見の間を出る。
一度だけ振り向けば、玉座に座る王は頭を垂れ、赤い絨毯は黒々と染まっていた。
『姫様…っ…』
『扉を閉めなさい。
そして、あなた方は国を出なさい。
南門に私の使いがいます。
ほんの少しではありますが、家族が暮らすには十分な金子を用意しました。
受け取って、この国を出なさい。
周辺諸国への案内も出来るように手配しています。
急ぎなさい。
あなた方は新しい時代を生きるのです』
『っですが姫様はッ…』
『っ行きなさいッ。
私は責任を取らねばなりませんっ。
さぁ、直に反乱軍が火をかけにやってきます』
頭を下げて去って行く官達を見送り、自分の部屋へと向かう。
半年離れていただけだと言うのに、他人の家にいるようで落ち着かなかった。
皇女としてのドレスに袖を通せば、それは立派な死装束に見えた。
喧騒が遠くから聞こえてくる。
さぁ、最期くらい皇女らしく振る舞ってやろう。
『父上。
お迎えに上がりました』
『おぉ、我が騎士よ。
何処に行っておったのだ。
はよう、あの愚かな民衆共を討ち滅ぼしてまいれ』
『父上…私は父上とお呼びしました。
もう貴方の騎士ではない。
ここにこうして立っているのは、貴方の娘としてです』
『何を言っておる。
そちは我が騎士だ。
”王の騎士”だ。
わしに子などおらん』
分かっていた。
この人は、私達兄姉や妃達の事など何とも思ってはいない。
必要なのは役に立つ者だけ。
自分の思い通りに動かす事のできる者だけ。
所詮、私もこの人の道具の一つでしかないのだ。
この人が王である為に必要な部品でしかないのだ。
『…父上…兄上や姉上、そして貴方の妃達からの遺言です…。
”共に罰を受けましょう…先に逝き待っています”と…』
『ッなっ何を言っておるのだッッ…わしはっ…わしはッ…』
『私もそう遅れては逝きません。
すぐに参ります』
何も感じなかった。
実際、父と呼べる程親しくもなかった。
だがせめて民や他の者ではなく、娘である自分が、最期を看取る者であろうと思った。
王を殺すと言う罪を…父を殺すと言う罪を、全て背負って逝こうと決めたのだ。
『お休みなさい、父上…次はどうか穏やかな人生を歩まれますように…』
誰かに恨まれる事なく、誰かを恨む事なく…そんな夢のような人生など存在しないけれど、せめて最期の時に惜しまれる人生を送ってほしい。
次の生がそんな人であってほしい。
静かに背を向け謁見の間を出る。
一度だけ振り向けば、玉座に座る王は頭を垂れ、赤い絨毯は黒々と染まっていた。
『姫様…っ…』
『扉を閉めなさい。
そして、あなた方は国を出なさい。
南門に私の使いがいます。
ほんの少しではありますが、家族が暮らすには十分な金子を用意しました。
受け取って、この国を出なさい。
周辺諸国への案内も出来るように手配しています。
急ぎなさい。
あなた方は新しい時代を生きるのです』
『っですが姫様はッ…』
『っ行きなさいッ。
私は責任を取らねばなりませんっ。
さぁ、直に反乱軍が火をかけにやってきます』
頭を下げて去って行く官達を見送り、自分の部屋へと向かう。
半年離れていただけだと言うのに、他人の家にいるようで落ち着かなかった。
皇女としてのドレスに袖を通せば、それは立派な死装束に見えた。
喧騒が遠くから聞こえてくる。
さぁ、最期くらい皇女らしく振る舞ってやろう。