蒼の王国〜金の姫の腕輪〜
‡〜囚われし者達〜‡

「ッッ…春臣?!
ラダっ?!」

突然膨らんだ瘴気に驚き、頭を上げれば、立ち尽くす春臣とラダが、闇に包まれ消えるところだった。

「なに…っ」

二人の消えた場所を見ながら呆然とする。
本当に突然だった。
何も感じなかったのに、本当に突然湧いて出たように感じた。

「まずったわね…★
もうちょっともつと思ってたんだけど」
「場所が悪かったようですね…それでも城の敷地に入らねば干渉されないと思ったのですが…」
「リュスナの浄化は完璧だったわ。
だからやつら焦ったのね…餌に成りうる負の感情を敏感に嗅ぎとったんだわ★
これは早いとこ瘴穴を見つけて封じなくちゃね」
「何が…ナーリスどうなって…」
「そうねぇ〜こうなると、土地神の力でもどうにもならないの★
さっさと自衛に入っちゃったみたい。
だから、城の中ももう安全とは言えないわ」
「囚われてしまったのです…。
瘴穴の力とする為に、負の感情…閉じられようとしていた想いを糧とする為に…」
「っ快…?…っシリス…っ?
これは?
どうなって?…っ」
「リュスナ姫。
急がなければ、町にまた瘴気が噴き出してしまうわ」
「フェリス様…っわかりましたっ」
「姉さま、急いでください…。
マルスも囚われました」
「ッッ…そんなっ」
「あら〜★
突然、活発化しちゃったのは弟君のせいかしら☆」
「マリス…あの子を追い詰めたのは、わたくしの責任でもあります…。
わたくしは、町に瘴気が出ないよう、城に結界を張ります。
リュスナ姫…あの子を…。
あの子はあなたを慕っていました。
だから、あなたの死を知って、すべての人間が許せなくなる程憎んでしまった。
迎えに行ってあげてください。
わたくしの言葉は届かなくても、あなたの言葉だけは届くと思うから」
「急ぐわよ。
弟君達が”鬼人化”されたら厄介だわ★」
「っ…でもっ…快ッ…」
「姉さま…わたくしの姉さま…快はわたくしと共にあります。
わたくしが快であり、快がわたくしなのです。
いずれお話いたします。
ですが、今はどうか…」
「…っわかった。
全部終わったら話して。
でも、これだけは先に言っておく。
会えてうれしい…シリス…私の大切な妹…。行ってくる」
「ッ…っはいっ…お気をつけてっ」

ナーリスと共に走り出す。
そして、もう一度あの場所を見上げる。
一瞬後、視線を城へ向ければ、もう迷わない。

私の大切な人達…。


初めて外の世界をくれた人。

傍で支えてくれた人。

最後まで慕ってくれた人。


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