蒼の王国〜金の姫の腕輪〜
‡〜支える者〜‡

その日の蒼葉は、ずっと塞ぎ込んでいた。
祖父の屋敷へ出掛けて行ったその日の夜、会社から帰ってきて挨拶をすれば、どことなく上の空な感じで、次の日もその次の日も、部屋から出てくる事はなかった。
夜中も部屋からは電気の光が洩れていて、眠っている様子ではない。
数日後、出てきたかと思えば、物思いに耽り、どこか苦し気に見えた。

「具合でも悪いのではないかい?」

葵に話せば、無用な心配をさせてしまった。

「顔色が悪いという感じではないですし…どちらかと言えば、何か悩んでおられるような…」
「…それは屋敷から帰ってきてからなんだよね?」
「はい…」
「あの子は悩みとか打ち明けないからね〜。
それとなくお義父さんに聞いてみるよ」

その夜、葵からのメールにはこう書かれていた。

―――――――――――
もう少し様子を見ていてほしい。
お義父さんにも考えがあるみたいだから。
様子はなるべく報告して。
{ 葵 }


葵にもなぜ悩んでいるのかを明かさなかった会長を不審に思ったが、蒼葉に相談されない以上、介入することは憚れる。
だから、今日もあまり会話ができなかった。

「蒼葉様。
ちゃんと寝てください」
「…うん…」
「聞いてますか?」
「…ん…?」
「聞いてませんね…。
何かあったらいつでも呼んでくださいね」
「…ん…」

生返事の連続。
せめて健康管理くらいは自分がしっかりしようと決めた。


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