蒼の王国〜金の姫の腕輪〜
新たな始まり
‡〜金の姫の腕輪〜‡
「何とかなったみたいね…」
「綺麗…」
「本当ね…」
今、城から噴き出すように煌めく金の光が町を覆っていく。
城に結界を張っていたフェリス、シリス、セリは、その輝きに目を奪われていた。
「終わったのですか?」
「そうよっ。
土地神の加護も元に戻ったしぃ、瘴穴も塞がれたわ」
「っなら、リュスナねぇさまにっ」
「ええっ、会いに行きましょう」
「ちっちょっと…っ。
あぁん。
ワタシも行くぅ」
空から降り注ぐ金の光に驚き、重い身体を引きずるように外へと出て来た民達は、いつもは暗く淀んだような城が、淡く光輝くのを見て誰もが息をのんだ。
小さな小さな光の粒子に触れれば、ふっと身体が軽くなり、暖かく優しい想いに包まれるようだ。
何故か城に戻れずにいた騎士達は、ゆっくりとその足を城へと向ける。
光輝く城を見上げながら誰もが思った。
国が変わる。
何の根拠もない確信。
けれど、光はとても美しく、心が澄み渡るようで…。
国全てを包み込む。
唐突に誰かが叫んだ。
「金の姫の腕輪だ…っ」
それを皮切りに、次々にザワザワと驚きと感動の声を上げる。
「ホントだッ。
金の姫の腕輪だっ」
それは城の上空。
金の光が大きな輪を描き、陽の光を浴びて燦然と輝いていた。
「ねぇ、お母さん。
金の姫の腕輪って何?」
「昔話よ。
金の姫に精霊王様が託した腕輪…。
平和の象徴なんだよ…」
「平和…?」
「そう、だからあれはね?
きっと精霊王様が、これからこの国が良い国になるようにと加護を与えてくださった証なんだよ」
「?ふぅん…?」
誰もが笑顔で城を見上げる。
きっと明日は笑える日が来るのだと。
そんな確証がどこにもなくても、人々は満面の笑みで城を…空を見上げた。
城のバルコニー。
光の粒子が飛び交う風の中で、城下を見渡す。
こんな風に、まだ月が輝く前に城のバルコニーに立つのは初めてだった。
陽の光に照らされ、今は金に輝く町を見て、薄く微笑みを浮かべる。
「リュスナ姉様…」
遠慮がちに掛けられた声は、昔の面影はなく、けれど心に響いてくるようだった。
ゆっくりと振り返れば、予想通り困惑した顔があった。
「ねぇ…さま…っ」
分かっているよと微笑みを深くすれば、はっとしたように動きを止めた。
「…おいで、マリス」
手を差しのべて待っていれば、おずおずと昔と同じように手を伸ばした。
重なった手は大きくて、あの頃とは逆の対比にクスリと笑ってしまった。
不思議そうなマリスの手を引き、バルコニーの手摺に重ねたままの手を置いた。
「何とかなったみたいね…」
「綺麗…」
「本当ね…」
今、城から噴き出すように煌めく金の光が町を覆っていく。
城に結界を張っていたフェリス、シリス、セリは、その輝きに目を奪われていた。
「終わったのですか?」
「そうよっ。
土地神の加護も元に戻ったしぃ、瘴穴も塞がれたわ」
「っなら、リュスナねぇさまにっ」
「ええっ、会いに行きましょう」
「ちっちょっと…っ。
あぁん。
ワタシも行くぅ」
空から降り注ぐ金の光に驚き、重い身体を引きずるように外へと出て来た民達は、いつもは暗く淀んだような城が、淡く光輝くのを見て誰もが息をのんだ。
小さな小さな光の粒子に触れれば、ふっと身体が軽くなり、暖かく優しい想いに包まれるようだ。
何故か城に戻れずにいた騎士達は、ゆっくりとその足を城へと向ける。
光輝く城を見上げながら誰もが思った。
国が変わる。
何の根拠もない確信。
けれど、光はとても美しく、心が澄み渡るようで…。
国全てを包み込む。
唐突に誰かが叫んだ。
「金の姫の腕輪だ…っ」
それを皮切りに、次々にザワザワと驚きと感動の声を上げる。
「ホントだッ。
金の姫の腕輪だっ」
それは城の上空。
金の光が大きな輪を描き、陽の光を浴びて燦然と輝いていた。
「ねぇ、お母さん。
金の姫の腕輪って何?」
「昔話よ。
金の姫に精霊王様が託した腕輪…。
平和の象徴なんだよ…」
「平和…?」
「そう、だからあれはね?
きっと精霊王様が、これからこの国が良い国になるようにと加護を与えてくださった証なんだよ」
「?ふぅん…?」
誰もが笑顔で城を見上げる。
きっと明日は笑える日が来るのだと。
そんな確証がどこにもなくても、人々は満面の笑みで城を…空を見上げた。
城のバルコニー。
光の粒子が飛び交う風の中で、城下を見渡す。
こんな風に、まだ月が輝く前に城のバルコニーに立つのは初めてだった。
陽の光に照らされ、今は金に輝く町を見て、薄く微笑みを浮かべる。
「リュスナ姉様…」
遠慮がちに掛けられた声は、昔の面影はなく、けれど心に響いてくるようだった。
ゆっくりと振り返れば、予想通り困惑した顔があった。
「ねぇ…さま…っ」
分かっているよと微笑みを深くすれば、はっとしたように動きを止めた。
「…おいで、マリス」
手を差しのべて待っていれば、おずおずと昔と同じように手を伸ばした。
重なった手は大きくて、あの頃とは逆の対比にクスリと笑ってしまった。
不思議そうなマリスの手を引き、バルコニーの手摺に重ねたままの手を置いた。