蒼の王国〜金の姫の腕輪〜
‡〜愛する孫〜‡
「読めたかい?」
「はい…」
この子がそうだと気付いたのはいつだっただろうか。
小学生の頃、書庫ばかりに籠るようになった孫娘にたまには一緒にいたいと思い、仕事をする執務室へ呼びつけた。
『前の決算の書類はどこだったかな〜』
『右の棚の二段目の緑のファイルですよ』
そう部屋に持ち込んだ本を読みながら答える蒼葉を不思議に思ったが、一度目を向けただけで、言われたファイルを手に取った。
『ほんとだ〜。
良く気が利く孫で嬉しいよ』
そして次に、何気なく口にした『もう紅葉も葉が落ちてしまうね〜』が確信を得るきっかけになった。
『そうですね。
ここに来た時より十五枚も減りました』
『?…枚数わかるの?』
『うん。
右の枝から六枚、左の枝から…』
『っちっちょっと待って。
もしかしてどこから落ちたのかもわかるのかい?』
『?はい…?』
『…そう…』
ただ記憶力がすごいのではない。
もはや特殊能力だ。
だから、確信した。
先祖が残し、言い伝えてきた事。
―――我らの愛した姫が、必ずいつの日にか一族に生まれる。
前世の記憶を持ち、些細な事でも記憶してしまう能力をその魂に宿して―――
この子がそうだろうと思った。
その頃だ、蒼葉が眠らない事を知ったのは。
全く眠れない日が続き、突然一日二日昏睡する。
心配する家族や使用人に、そう言う体質なのだと冷静に話す孫が憐れだった。
都会の情報があふれる場所で生活するよりも、少しでも負担を減らせるように、昔からあった別宅を改装し、そちらへ孫を移した。
そしてたまに帰ってくる孫の為に、ちょくちょくリフォームをするようになった。
小さな変化を記憶するよりも、大きな変化を記憶する方が疲れないと言っていたからだ。
多分孫は、私や葵がただのリフォーム好きな人だと思っているだろう。
それで良い。
蒼葉は、自身にものすごく厳しい。
そして、何かをしてもらう事に臆病で、少しばかり人間不信。
何でもできる蒼葉の唯一の欠点だ。
想われているのに気づかない。
そんな”想い”特に好意を自分に向けられるはずがないと思っている。
”愛する事”を知っているのに…。
”愛される事”を知ろうとしない子…。
いつかわかる日がくるだろうか…。
「読めたかい?」
「はい…」
この子がそうだと気付いたのはいつだっただろうか。
小学生の頃、書庫ばかりに籠るようになった孫娘にたまには一緒にいたいと思い、仕事をする執務室へ呼びつけた。
『前の決算の書類はどこだったかな〜』
『右の棚の二段目の緑のファイルですよ』
そう部屋に持ち込んだ本を読みながら答える蒼葉を不思議に思ったが、一度目を向けただけで、言われたファイルを手に取った。
『ほんとだ〜。
良く気が利く孫で嬉しいよ』
そして次に、何気なく口にした『もう紅葉も葉が落ちてしまうね〜』が確信を得るきっかけになった。
『そうですね。
ここに来た時より十五枚も減りました』
『?…枚数わかるの?』
『うん。
右の枝から六枚、左の枝から…』
『っちっちょっと待って。
もしかしてどこから落ちたのかもわかるのかい?』
『?はい…?』
『…そう…』
ただ記憶力がすごいのではない。
もはや特殊能力だ。
だから、確信した。
先祖が残し、言い伝えてきた事。
―――我らの愛した姫が、必ずいつの日にか一族に生まれる。
前世の記憶を持ち、些細な事でも記憶してしまう能力をその魂に宿して―――
この子がそうだろうと思った。
その頃だ、蒼葉が眠らない事を知ったのは。
全く眠れない日が続き、突然一日二日昏睡する。
心配する家族や使用人に、そう言う体質なのだと冷静に話す孫が憐れだった。
都会の情報があふれる場所で生活するよりも、少しでも負担を減らせるように、昔からあった別宅を改装し、そちらへ孫を移した。
そしてたまに帰ってくる孫の為に、ちょくちょくリフォームをするようになった。
小さな変化を記憶するよりも、大きな変化を記憶する方が疲れないと言っていたからだ。
多分孫は、私や葵がただのリフォーム好きな人だと思っているだろう。
それで良い。
蒼葉は、自身にものすごく厳しい。
そして、何かをしてもらう事に臆病で、少しばかり人間不信。
何でもできる蒼葉の唯一の欠点だ。
想われているのに気づかない。
そんな”想い”特に好意を自分に向けられるはずがないと思っている。
”愛する事”を知っているのに…。
”愛される事”を知ろうとしない子…。
いつかわかる日がくるだろうか…。