蒼の王国〜金の姫の腕輪〜
‡〜秘密の場所〜‡

春臣は、過保護だ。
最近更に度を増しているように思う。
だから、身体を鍛えようと思い立った今、彼には絶対知られてはならない。
むしろ、誰にも知られないようにするのがベストだ。
彼は、私が何をしても、必ずどこかで情報を手に入れる。
無駄に優秀にしすぎたのは失敗だった。

だから夜、皆が寝静まった頃、部屋に電気を点けたままそっと部屋を抜け出した。
誰もいない事を確認して、一階に降りる。
階段下の物置をそっと開けて勘を頼りに奥へと進む。
一番奥のタペストリーの裏を手探りで確認すれば、大きめの鍵穴がある。
首にかけてきたおもちゃの様な大きな鍵を差し込み回せば、カチリと軽い音がした。
そのままグッと押せば、ガツンといって取手が壁から突きだす。
それを引っ張れば、軋む事もなく軽く扉が開いた。
真っ暗なその中に滑り込み扉を閉める。
右手を壁に触れれば、スイッチがあり、明かりがついた。
前を見れば、二メートル先に階段が上へと続いている。
しっかりとした階段は、扉同様この屋敷が建てられた時に造られたにもかかわらず、軋む音がしない。
二階、三階と上がり、ようやく一枚の扉が 現れた。
扉の中央の窪みに、下で使った同じ鍵の、今度は持ち手についている飾り細工を押し当てる。

カシャン、ガッシャン、カチリ。

複雑な音が続き、こちらも同じ様に取手が突き出てきた。
開けた先には、整備された芝生。
そして満天の星が光輝いていた。

この場所は、誰も知らない。
春臣は勿論、父や祖父もだ。

〔みっみっみ〜〕
〔みみむ〜〕

可愛らしい声が聞こえ、足下をみれば、ここを管理してくれている小さな”精霊”達が楽しそうに跳ねていた。

「久しぶり。
元気だった?」
〔みみゅ〜〕
〔み〜〕
〔みみ〜〕
「ふふっ。
ラスクを作ったんだ。
食べて」
〔みゅっみゅっ〕
〔みみみみ〜〕

可愛らしい彼らは甘えん坊で、ちょいちょいと指で構うととても喜ぶ。

〔み〜ぃ〕
「今日からは、あまり構ってやれないんだ。
ここで身体を動かしたいんだけど、いいかな」
〔〔〔み〜〕〕〕
「ありがと」


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