蒼の王国〜金の姫の腕輪〜
‡〜気鬱〜‡

最近、蒼葉が変わった。
何があって変わったのか、はっきりとは分からない。
だが、常に纏っていたどこか影のある雰囲気が払拭され、自信に満ちた輝きを放つようになった。
久しぶりの眠り明けがそれにつながっていると思っていたが、それにしては以前と変わり過ぎる。
吹っ切れたような。
悩みが消えたような。
何らかの決意をしたような。
そんなすっきりとした変化だ。
良い変化だとは思うのだが…。

「ニ日間ほど、出張で社長に付いて仕事をする事になりましたので、留守にしますが、眠れそうならちゃんと休んでください。
それと、どこかに出かける前にはちゃんと連絡を…」
「わかってる。
気にせずにさっさと行っといで。
遅れる」
「…では、行ってきます」

最近、過保護にし過ぎるとは自覚しているが、言わずにはおれない。

『最近、ちょっと娘が冷たいように感じるんだ…ウザいとか言われたらどうしよう…』

少し前に葵がこぼしていた言葉だ。
蒼葉に限って父親にそんな事は言わないと思うが、自分には…言うかもしれない…。
そんな事を言われたら…。
蒼葉の場合、面と向かってはっきりと言うだろう。
オブラートになんて言葉は彼女の中にはないのだから。
もしそんな事を言われたら、立ち直れるだろうか…むしろ、屋敷から追い出されかねない…。
どんどん深みにはまっていくようで、会社についた時には、すっかり気落ちしていた。

「っどうしたんだい?
何かジメジメ」
「…いえ。
少し反省を…」
「反省?
何か失敗したのかい?」
「ええ…蒼葉様の事で…」
「!っ何やっちゃったの?」
「…なぜそんなに嬉しそうなんです?…」
「えっだって、ついにお約束のうっかりラブトラブルとかやっちゃったって事でしょっ?」
「ご自分の娘相手に…何を期待してるんです…」
「う〜ん。
君なら良いかなって…。
…うんっ変な男相手よりも、断然イイよっ。
そうしようっ。
応援するよっ」
「何でそうなるんですっ。
むしろ、嫌われそうで落ち込んでるんですよッ」
「…っ大変じゃないかっ。
どんなスゴイ事しちゃったのっ?!」
「っ…何もしてませんっ…やましい事は…え〜えぇっしてませんッ。
ただ少し、口うるさいと思われているようだと」
「何だ、全然心配ないよ」


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