蒼の王国〜金の姫の腕輪〜
‡〜唯一無二〜‡
蒼葉は、小さな頃から手の掛からない子だった。
賢く、言われた事を理解して行動する。
そんな異常なくらい頭の良い子だ。
妻は常に言っていた。
『手が掛からなすぎて面白くないわ〜』
楽でいいじゃないかと周りには言われるが、確かに面白くなかった。
わがままを叱るとか。
問題を起こして保護者呼び出しとか。
言った事を理解してくれなくて、大人げなく怒るとか。
そんな子育て中の悩みが全く出てこないのだ。
ただ、唯一気になっていたのは、他人との距離だった。
娘は、常に一歩引いた立場にいた。
目の前で喧嘩をしている子達がいても、何の興味も示さない。
目を向けたとしても、成り行きを見守っているだけ。
他人に興味を示さないのだ。
相手が話し掛ければそつなく話し、誘われれば一緒に遊ぶ。
だが、どうしても距離があるようで、何をしていても本当に楽しんで笑っている顔を見たことがなかった。
そんな心配が何年も続き、ある日娘は”人”を拾ったらしい。
らしいと言うのは、人伝に聞いたからだ。
それは娘いわく、道にボロボロになって転がっていたらしい。
歳は二十。
男で、親に勘当されて頼れる身寄りはないとの事。
普通の親なら、何を馬鹿なと思うだろう。
だが私も妻も、義理の父や屋敷の使用人達までもが、飛び上がって驚き、喜んだ。
他人に興味を示さなかった娘が、他人を拾ってきた。
その上、自分で世話を焼いている。
どんな男か気になった。
しばらくして娘が連れて来たのは、真面目でしっかりとした青年だった。
当時まだ小学生だった娘に私の秘書にと薦められ、ちょうど秘書になる人材を検討中だった私は、冗談半分で採用してみれば、これがまた出来るヤツだった。
頭も良いようで、娘に仕込まれたと言って何でもそつなくこなす。
いつの間にか第一秘書にしていた。
気に入ったと言うのもある。
誠実で、私の面倒も見てくれるし、娘が一番近くに居る事を許している。
だから、この日娘に嫌われたかもしれないと言う彼に確信を持って言えた。
「全然心配ないよ。
君を嫌う事なんてない。
君は、あの子が唯一興味を持った人なんだからね」
蒼葉は、小さな頃から手の掛からない子だった。
賢く、言われた事を理解して行動する。
そんな異常なくらい頭の良い子だ。
妻は常に言っていた。
『手が掛からなすぎて面白くないわ〜』
楽でいいじゃないかと周りには言われるが、確かに面白くなかった。
わがままを叱るとか。
問題を起こして保護者呼び出しとか。
言った事を理解してくれなくて、大人げなく怒るとか。
そんな子育て中の悩みが全く出てこないのだ。
ただ、唯一気になっていたのは、他人との距離だった。
娘は、常に一歩引いた立場にいた。
目の前で喧嘩をしている子達がいても、何の興味も示さない。
目を向けたとしても、成り行きを見守っているだけ。
他人に興味を示さないのだ。
相手が話し掛ければそつなく話し、誘われれば一緒に遊ぶ。
だが、どうしても距離があるようで、何をしていても本当に楽しんで笑っている顔を見たことがなかった。
そんな心配が何年も続き、ある日娘は”人”を拾ったらしい。
らしいと言うのは、人伝に聞いたからだ。
それは娘いわく、道にボロボロになって転がっていたらしい。
歳は二十。
男で、親に勘当されて頼れる身寄りはないとの事。
普通の親なら、何を馬鹿なと思うだろう。
だが私も妻も、義理の父や屋敷の使用人達までもが、飛び上がって驚き、喜んだ。
他人に興味を示さなかった娘が、他人を拾ってきた。
その上、自分で世話を焼いている。
どんな男か気になった。
しばらくして娘が連れて来たのは、真面目でしっかりとした青年だった。
当時まだ小学生だった娘に私の秘書にと薦められ、ちょうど秘書になる人材を検討中だった私は、冗談半分で採用してみれば、これがまた出来るヤツだった。
頭も良いようで、娘に仕込まれたと言って何でもそつなくこなす。
いつの間にか第一秘書にしていた。
気に入ったと言うのもある。
誠実で、私の面倒も見てくれるし、娘が一番近くに居る事を許している。
だから、この日娘に嫌われたかもしれないと言う彼に確信を持って言えた。
「全然心配ないよ。
君を嫌う事なんてない。
君は、あの子が唯一興味を持った人なんだからね」