蒼の王国〜金の姫の腕輪〜
‡〜妖精の長老〜‡

「お髭…おじいちゃん?」
「ここの長だよ」
〔クウルですじゃ。
姫以外の”人”と話すのは何百年ぶりか〕
「何百??
すげェ、クウルさんは、何歳なの?」
〔そうですな〜九百と少しになりますかな〕
「ッ九ひゃくっ???」
〔ほほっ。
わたくしども”ナルス”は、平均して約四百年生きますが、わたくしは精霊王の直属の加護を受けておりますゆえ…〕
「精霊王!?
本当にいるの?
姉ちゃんに途中までお話してもらったけどいるんだ」
〔ほほっ。
お話とは、”精霊王と金の姫”ですかな。
勿論、わたくしどももこうして存在しているのです。
精霊王がいらっしゃってもおかしくはありますまい〕
「そっかぁ…会ってみたいな…」
〔残念ながら、この次元にはいらっしゃいませんからなぁ〕
「この次元?」
〔ええ、わたくしどもの故郷は、この地球ではありません。
壁一枚隔てた別の世界とでも申しましょうか…〕
「異世界ってやつ?!
すっげぇ、行ってみたいっ」
〔イルの友人殿は、面白いですなぁ。
一言で異世界と言いましても、戦争の多い世界ですじゃ。
この世界の平和に慣れた者には少々キツぅございますよ〕
「危ないの?」
〔そうですな…五年ほど前に様子を見た限りでは、かなり危険で、そこに住む者も荒んで心や体を病んでおりました…〕
「…そっかぁ…ところでさ、友人殿ってやつやめてよ。
俺は快、カイって呼んでよ」
〔そうですか。
でしたらわたくしも、ウルじぃと呼んでくだされ。
姫が幼い時からそう呼びますからな〕
「うん、ウルじぃ。
そうだ、異世界の話だけど、大きくなったらウルじぃが里帰りする時について行ってもいい?」
〔そうですなぁ。
それにはもっと大きく、強く、丈夫になってもらわねば…。
では今宵は、カイの成長を祈って、楽しみましょうぞ〕
「うんっ。
よ〜しっ、明日から体を鍛えよう」
〔ほほっ。
わたくしどもが作った食べ物は、体に良いですじゃ。
遠慮なくお食べなされ〕
〔みみぅぃ〜《カイ、おたべ〜》〕
〔みぃ〜《おたべ〜》〕
「よ〜っし。
姉ちゃんっ食べよっ。
そんで、明日またさっきのお話聞かせて」
「あぁ。
明日ね…」


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