蒼の王国〜金の姫の腕輪〜
‡〜師弟愛?〜‡

強く、強く抱き締められる腕。
涙は次から次へと流れ、彼の服を汚してしまう。

”ラダ・クロスリード”

それが師匠である彼の名前。
ずっと会いたかった。
ラダは私にとって”師”であり、”友人”であり、”父”だった。
その美しい見た目に似合わない乱暴な言葉使いも、人付き合いの苦手な性格も、嫌いではなかった。
人間嫌い同士、馬が合ったのも事実だ。
ふらっと放浪の旅に出てしまうラダ。
いなくなると胸にぽっかり穴があいたように寂しかった。
ラダは何も思わないかもしれない。
会いたいなんて気持ちなど他人に向ける人ではない。
それはきっと、人間よりも遥かに長く生きてきた人の生き方。
心に留めるモノを少しでも少なくして生きてきた人。

だから、こんな風に抱き締めてくれるなんて思いもしなかった。
きっと私の事など忘れてしまっている。
覚えていたとしても、容赦なく突き放す。
そのはずだったのに…。

「…っバカやろうッ…もっと早く会いに来いっ…どんだけ待たせんだッ…」
「…ッすみません、ごめんなさい…っ」
「…ッ謝って済むかッッ」

そう言って突き放すのではなく、痛いほどに抱き締めてくれる。

「…っ…ラダっ苦しい…っ」
「黙れっ」

苦しい。
うれしいが…苦しい。

「…っラダ…ッ」
〔みみゅみみっ《ラダ、しめすぎだよっ》〕
「うるせぇッ。
今俺は、俺が感じた痛みを教えてんだっ。
いっそ絞め殺して…」
〔みみッ。
みみゅっみみっ。
みゅっみみ《やめてッ。”いみ”もかわってるっ。”しめ”ちゃだめ》〕
「ッふんっ」

やっと解放されてへたりこむ。
涙はいつの間にか止まっていた。

「俺を待たせた罪は重い。
罰として一つ仕事を手伝わせてやる」
「っコホッ仕事…?」
「そうだっ。
その間ずっと一緒に居てやる。
文句もまだ言い足りないしな。
どうだっうれしいだろっ」
「………うっ…」
「ん…?
う・れ・し・いだろ…?」
「…っはい…」

そうだ、こう言う人だった。
女王様気質。
変わっていない…。

「よしっ行くぞっ」

できれば、再会の感動をちゃんと味わいたかった…。

〔みみ《むり》〕


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