蒼の王国〜金の姫の腕輪〜
‡〜見抜く力〜‡

棚の間にほんのりと緑色の光が見える。
彼らはいつでも優しい光を纏っていて、気を付けて見ていれば、屋敷のそこかしこにその気配を感じる事ができた。
勿論近づけば、ふっと消えるように逃げていく。
顔を出すのは”イル”だけだ。

「葵様は…妖精の存在を信じますか?」
「ん?
信じるよ?
僕はね、小人さんもいると思ってるから。
そう言う柚月くんは信じてるの?」
「…私は、信じます」
「おや。
僕はてっきり、全面否定すると思ってたけど、意外と融通きくんだね」
「…あまり良い意味に聞こえませんが…」
「うん?
だって、君は純粋な現実主義者だと思ってたからね。
そう言う空想的なの嫌いかなって。
蒼葉もあれで、けっこうそう言うものに抵抗ないみたいだね。
君よりも意外だよ」
「蒼葉様は…リアリストで間違いないですよ…私も期待を裏切らず、リアリストですし…」
「?
でも、妖精さん信じてるんだよね?」
「はい」
「なのにリアリスト?
?どういう事になるの?」
「自分の目は信じる事にしていますから、目にしてしまったら、どんなに現実離れしていても、存在を否定したりしません」
「???
っじゃぁ、見たことあるって事?!」
「柚月。
イル知らねッッ…すみませんっ葵さん?!」
「やあ。
快くん、久しぶり」
「はいっ。
お久しぶりですっ」
「柚月くんにご用かい?」
「え〜っと…ちょっと探しものを…知らないかなって…」
「おや。
僕今日暇なんだ。
お手伝いするよ?」
「えっと…葵さんは…」
「ん?
僕じゃ駄目なのかい?
どうも様子がおかしいね〜?
柚月くんといい、快くんといい…何を隠しているんだい?」

鋭い。
ぼんやりしているようで、核心をついてくる。

「なっ何を隠す事があると?」
「う〜ん。
君が隠す事となると、やっぱり蒼葉に関係する事だろうね〜?
そんでもって、今回の蒼葉のお出掛け…君が未だに追いかけられずにいる…どこに行ったのかも僕に話せない…手を出せない所にいて、そこに行く為の手段を探しているってとこかな?
更に、さっきの君の奇妙な質問。
妖精さんにでも協力してもらわないと行けない所なのかな?」
「葵さん…すごい…」

恐い人だ。
何でも見抜かれてしまう。
さすがは蒼葉の父だと思う。

「…っそこまで分かってしまっては仕方がないですね…。
白状いたします…」


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