蒼の王国〜金の姫の腕輪〜
‡〜嵐の様に〜‡
ガツッ
ドンっ
グワシャッ
「まッ…待ってくれッッ」
「すみませんッッごめんなさいッッ…」
「命だけはッ」
「仕方なかったんですぅ〜っ」
ガラガラッ。
ガッタン。
「早く当主に知らせをッッ」
「道をあけろ〜ぉッ」
「めちゃくちゃだ…」
『阿鼻叫喚』
嵐のように通り過ぎていった後、その言葉が誰の頭にもよぎった。
その男が現れたのは、夕闇に染まる頃。
突然門が乱暴に開き、何事かと思えば、一瞬で射殺せそうな冷酷で鋭い光を宿す目に吸い寄せられた。
そして、咄嗟に言葉の出ないこちらを無視して、ずかずかと入ってきた。
「誰だ?!
ここを戸羽家と知っての…っ」
「そんな事は承知だ。
当主を出せっ。
奪った物を返してもらう」
「っひっ…!?」
「もう一度だけ言う。
当主を出せ」
「はっはい〜ぃっ」
人間じゃない…悪魔だ。
地の底を這うような重い声。
裏でヤクザ者と繋がりのある家の者としても、びびらずにはいられない。
この男は、いくつもの修羅場を乗り越えてきた者特有の空気を纏っていた。
「っ当主をっ呼んでまいりますッッ」
必死で叫ぶように言えば、きつく掴まれていた胸ぐらを放された。
ドスっと床に尻をついたが、痛さなど感じなかった。
逃げるように不様な格好で屋敷の奥へと急ぐ。
今にも追ってきて恐ろしいめにあわされるのではないかと戦々恐々としながら、当主の部屋へと駆け込んだ。
「とっ当主っ。
たっただいまッ男が一人っ当主を出せっ、奪った物を返せと暴れておりますッ」
「ほぅ。
通しなさい」
「お逃げくだへっ…今何と…」
「こちらへ通しなさい。
それから、先日の仕事で、早宮から持ってきたものをここへ」
「はっ…はいっ」
間をおかずに入ってきた男は、確かに家の者達が慌てても仕方がないと思える雰囲気を持っていた。
「失礼。
わたくしがこの戸羽家の当主、”祥”と申します」
「っ当主…お持ちしました…」
「こちらへ。
お前は家の者達をおさめて下がりなさい」
「…はい…」
「さて。
お求めの物は、こちらですね」
差し出された漆の美しい箱に入っていたのは、一見すると十字のアクセサリーだった。
「ええ」
そう答えて、受け取ろうと手を伸ばしたその時、外が急に騒がしくなった。
「っお待ちくださいっ。
ただいま当主は接客中で…っ」
「承知の上だ」
その人は、躊躇なく部屋に踏み込んできた。
ガツッ
ドンっ
グワシャッ
「まッ…待ってくれッッ」
「すみませんッッごめんなさいッッ…」
「命だけはッ」
「仕方なかったんですぅ〜っ」
ガラガラッ。
ガッタン。
「早く当主に知らせをッッ」
「道をあけろ〜ぉッ」
「めちゃくちゃだ…」
『阿鼻叫喚』
嵐のように通り過ぎていった後、その言葉が誰の頭にもよぎった。
その男が現れたのは、夕闇に染まる頃。
突然門が乱暴に開き、何事かと思えば、一瞬で射殺せそうな冷酷で鋭い光を宿す目に吸い寄せられた。
そして、咄嗟に言葉の出ないこちらを無視して、ずかずかと入ってきた。
「誰だ?!
ここを戸羽家と知っての…っ」
「そんな事は承知だ。
当主を出せっ。
奪った物を返してもらう」
「っひっ…!?」
「もう一度だけ言う。
当主を出せ」
「はっはい〜ぃっ」
人間じゃない…悪魔だ。
地の底を這うような重い声。
裏でヤクザ者と繋がりのある家の者としても、びびらずにはいられない。
この男は、いくつもの修羅場を乗り越えてきた者特有の空気を纏っていた。
「っ当主をっ呼んでまいりますッッ」
必死で叫ぶように言えば、きつく掴まれていた胸ぐらを放された。
ドスっと床に尻をついたが、痛さなど感じなかった。
逃げるように不様な格好で屋敷の奥へと急ぐ。
今にも追ってきて恐ろしいめにあわされるのではないかと戦々恐々としながら、当主の部屋へと駆け込んだ。
「とっ当主っ。
たっただいまッ男が一人っ当主を出せっ、奪った物を返せと暴れておりますッ」
「ほぅ。
通しなさい」
「お逃げくだへっ…今何と…」
「こちらへ通しなさい。
それから、先日の仕事で、早宮から持ってきたものをここへ」
「はっ…はいっ」
間をおかずに入ってきた男は、確かに家の者達が慌てても仕方がないと思える雰囲気を持っていた。
「失礼。
わたくしがこの戸羽家の当主、”祥”と申します」
「っ当主…お持ちしました…」
「こちらへ。
お前は家の者達をおさめて下がりなさい」
「…はい…」
「さて。
お求めの物は、こちらですね」
差し出された漆の美しい箱に入っていたのは、一見すると十字のアクセサリーだった。
「ええ」
そう答えて、受け取ろうと手を伸ばしたその時、外が急に騒がしくなった。
「っお待ちくださいっ。
ただいま当主は接客中で…っ」
「承知の上だ」
その人は、躊躇なく部屋に踏み込んできた。