蒼の王国〜金の姫の腕輪〜
‡〜世界の為に〜‡

リュスナに再会した時、これは運命なのかと思った。
今この時にこの世界へと戻ってきた事。
俺に会いに来た事。
全てが示し合わせたようにピッタリとはまる様に感じた。
これが他の奴だったら、気にする事もなかったと思う。
世界の流れとして、他愛ない日常の中のものとしてただなんとなくその時を迎えただろう。
だが、リュスナの事となると話は別だ。
あいつはただでさえ過去に、世界の犠牲になって死んだと言う前歴がある。
それなのにまた、訳のわからない世界の渦に、巻き込まれようとしている。
巻き込む気はなかった。
だが、リュスナ無しには解決できないと思った。

”金の姫の腕輪”を探してほしい。

依頼主は、”精霊王”だった。

生きる者達から生気を奪いとる”瘴気”と呼ばれるものがある。
それをこの世界から無くす為に大地の気を調整する役目を担う”精霊王”は、完全に塞ぐ事のできない”瘴穴”を封じる為に、数多くの聖なる器を用意した。
その一つが”金の姫の腕輪”と呼ばれる物だった。

『《瘴穴がかなり閉じてきていたのだが、念を入れて”ナルス”に気を整えさせていた。
しかし、昨今また突然瘴穴が暴れ出した。
このままでは多くの者達に影響が出る。
永く正しい役目になかった為に腕輪の力も弱まってしまった。
代わりの物を新に作るには時間が掛かる。
即刻見つけ出してほしい》』

ふらふらとただ生きているだけだった俺に、いったい何の冗談かと思ったものだ。
世界などどうでも良い。
滅びるならば滅びてしまえ。
困る奴がいるなら、そいつらにやらせればいい。
なぜ俺なんだ。
そう他人事のように思っていたのだ。
つい数ヶ月前まで…。
虫の知らせとでも言うのだろうか。
世界や、自分にさえも興味を無くしていた俺の世界が突然色付きだした。
長い間、耳を素通りしていた”ナルス”の声が良く聞こえるようになった。

”帰って来る”

と騒ぎ出した彼らを見て、止まってしまっていた心が動き出したのを感じた。

”リュスナが帰ってくる!”

それはここ何百年も感じた事のなかった衝撃だった。
動き出した時間の中で、生きる希望が生まれるのを実感した。

何を話そう。
何をしよう。

クルクルと回転する頭が、今やらなくてはいけない事をはじき出す。

”リュスナが生きる世界を、帰ってくる場所を用意しなくては…”

現金な奴だと思われても仕方がない。
そうして様々な手を駆使して”金の姫の腕輪”の所在を突き止めた。


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