蒼の王国〜金の姫の腕輪〜
‡〜過去を知る者〜‡
「先ほど見張りの者から連絡がありました。
あちらからの来訪者が、ナルスと共に”精霊王の森”に向かっています」
「ナルスと?…何者だ?」
「報告によれば……『めッッちゃイイぃ人族の男とぉ、将来絶対、ちょ〜ぉ有望な男の子ぉでしたぁ◎
なんかぁ、誰かに会いたいみたい〜ぃ?な?
そんでぇ〜口喧嘩してたよぉ〜◎』…とあります…」
「…何で娘に行かせた…?」
「いつの間にか交替要員に紛れておりました…」
「っ…まあ、娘が動いたのはただの偶然…遊びの一環ではない…はずだ…。
その者達が会いたいと言う者はいったい…?」
「はっ、只今調べておりますっ。
それと、彼らの目的地とされる”精霊王の森”ですが、数日前より、ラダの姿がないとの報告が上がってきております…そちらは、いかがなさいますか…?」
「…あれも、”蒼き風の君”が亡くなってから腑抜けになってしまった…放っておいてもよかろう…。
マリスはどうしている…?」
「それが…完全に情報を断っておりまして…手の者も幾人か送りましたが、誰からも未だに報告がありません…。
あの国の現状さえも知ることができぬ状態でして…っ」
「…っ…どうしたら良いのか…もう、わしにもわからんっ…。
いっその事、ナーリスに相談してみるか」
「ッッ…あっあの方は国にご興味ありませんよ?!
その上、気分屋ですし…直接誰かを向かわせなくてはなりません…通信魔術はお嫌いだと以前よりおっしゃっておいででしたから…」
「むぅ〜。
あれも変わったからなぁ…」
頼りにしていた者達が、ある時を堺に皆変わってしまった。
もう二百年程前の事だ。
原因はわかっている。
”蒼き風の君”
人族の大国であった”カルナ国”の第三皇女。
彼の皇女は強く。
賢く。
純粋で優しく。
何より、誇り高く、決然と皆を導いた。
潔すぎる彼女の死は、傍にあった者達を絶望させるのに十分なものだった。
そんな彼らを更に苦しめたのは、彼女を非難する民達の声だった。
その命で購い、幸せを願った民達に、真実は伝わる事はなかった。
人族の寿命は約八十。
誤解が解けぬまま、いつしか熱はさめ、記憶の端へと追いやられた。
口伝として伝わったのは、悪の王族を倒した反乱軍の話。
だが、それさえも彼女の筋書きの内であったように最近思うのだ。
そして、真実を知る彼女を愛した数人の人族達は、悔しさを噛みしめながら、彼女の次の生が幸せであるようにと願い、死んでいった。
真実を知っているラダや、ナーリスなどの長命の者達は、それから表に立つ事をしなくなった。
動いたとしても、こっそりと、まるで彼女の死と一緒に自分達も死んだのだと言うかのように、陰で生きるようになったのだった。
「彼の姫が戻れば良いのにな…」
「はい…?」
「先ほど見張りの者から連絡がありました。
あちらからの来訪者が、ナルスと共に”精霊王の森”に向かっています」
「ナルスと?…何者だ?」
「報告によれば……『めッッちゃイイぃ人族の男とぉ、将来絶対、ちょ〜ぉ有望な男の子ぉでしたぁ◎
なんかぁ、誰かに会いたいみたい〜ぃ?な?
そんでぇ〜口喧嘩してたよぉ〜◎』…とあります…」
「…何で娘に行かせた…?」
「いつの間にか交替要員に紛れておりました…」
「っ…まあ、娘が動いたのはただの偶然…遊びの一環ではない…はずだ…。
その者達が会いたいと言う者はいったい…?」
「はっ、只今調べておりますっ。
それと、彼らの目的地とされる”精霊王の森”ですが、数日前より、ラダの姿がないとの報告が上がってきております…そちらは、いかがなさいますか…?」
「…あれも、”蒼き風の君”が亡くなってから腑抜けになってしまった…放っておいてもよかろう…。
マリスはどうしている…?」
「それが…完全に情報を断っておりまして…手の者も幾人か送りましたが、誰からも未だに報告がありません…。
あの国の現状さえも知ることができぬ状態でして…っ」
「…っ…どうしたら良いのか…もう、わしにもわからんっ…。
いっその事、ナーリスに相談してみるか」
「ッッ…あっあの方は国にご興味ありませんよ?!
その上、気分屋ですし…直接誰かを向かわせなくてはなりません…通信魔術はお嫌いだと以前よりおっしゃっておいででしたから…」
「むぅ〜。
あれも変わったからなぁ…」
頼りにしていた者達が、ある時を堺に皆変わってしまった。
もう二百年程前の事だ。
原因はわかっている。
”蒼き風の君”
人族の大国であった”カルナ国”の第三皇女。
彼の皇女は強く。
賢く。
純粋で優しく。
何より、誇り高く、決然と皆を導いた。
潔すぎる彼女の死は、傍にあった者達を絶望させるのに十分なものだった。
そんな彼らを更に苦しめたのは、彼女を非難する民達の声だった。
その命で購い、幸せを願った民達に、真実は伝わる事はなかった。
人族の寿命は約八十。
誤解が解けぬまま、いつしか熱はさめ、記憶の端へと追いやられた。
口伝として伝わったのは、悪の王族を倒した反乱軍の話。
だが、それさえも彼女の筋書きの内であったように最近思うのだ。
そして、真実を知る彼女を愛した数人の人族達は、悔しさを噛みしめながら、彼女の次の生が幸せであるようにと願い、死んでいった。
真実を知っているラダや、ナーリスなどの長命の者達は、それから表に立つ事をしなくなった。
動いたとしても、こっそりと、まるで彼女の死と一緒に自分達も死んだのだと言うかのように、陰で生きるようになったのだった。
「彼の姫が戻れば良いのにな…」
「はい…?」