蒼の王国〜金の姫の腕輪〜
‡〜傍にいる事〜‡
リュスナを傍に感じる時、夜が来なければいいと思う。
あいつは”記憶する者”だ。
何百年かに一人、そんなのが生まれるらしい。
初めてその事を知った時、『へ〜、便利だな』と言った。
けど、後でよくよく考えてみると、そんなお得なもんじゃなかった。
あいつを見ていると、俺が感じる孤独なんてものは可愛いもんだと思う。
皆が寝静まっても眠る事ができず、誰もが忘れた事を永遠に記憶している。
確かに、『あの時の事を覚えてれば…』なんて思う事はある。
それを思い出せたらいいのにと後悔するなんて事はざらだ。
だからと言ってあいつの能力を本当に便利だとは思えなかった。
忘れたいと思う事や、忘れたから生きていけるなんて事が絶対に人生にはある。
だから、あいつが夜に一人で空を見上げているのを見ると、何もしてやれない自分に無性に腹が立った。
リュスナが死んだと知った時。
傍にいられなかったという後悔よりも先に、『やっと眠れるんだな』と心の底から安堵したのを覚えている。
これであいつが、一人で空を見上げて夜明けを待つ事はない。
一度だけ見に行ったリュスナの死に顔はとても穏やかで、綺麗だった。
いつまでも眠っていて欲しい。
けれど、もう一度会って声を聞きたい。
そんな葛藤を、今日までいったい何度繰り返しただろう。
窓の外を見れば、あの頃と同じように空を見上げるリュスナがいる。
こんなにも傍にいるのに、世界に自分一人だけしかいないのだと主張するような孤独な背中。
抱き締めてやれたらと思う。
俺が傍にいるんだと言ってやりたい。
それがどれ程の慰めになるかは分からないけれど…。
どうやったって、眠らずにいてやる事はできなくて、あいつの苦しみや孤独を本当の意味で俺や他人が理解する事はできないのだ。
寒そうな背中に、上衣をかけても振り向く事はなかった。
リュスナにとって、俺はどのくらいの価値があるんだろうかと時々不安になる。
一番最初に会いに来てくれたのは本当に嬉しくて、誇らしかった。
誰よりも先に想ってくれたんだと思うと、俺がリュスナの中で占める割合は、俺が思っているほど悪くないんじゃないかと思う。
だから俺は決めた。
絶対にあいつを死なせたりしない。
不条理な世界にも、民達にも、あいつの命を二度とくれてやる気はない。
これは決意だ。
覚悟だ。
「二度と一人にはしない。
二度と一人で何かを背負わせたりさせるかっ。
必ず傍にいるから…」
誓うように呟いた言葉は、世界に叩きつけた挑戦状だった。
リュスナを傍に感じる時、夜が来なければいいと思う。
あいつは”記憶する者”だ。
何百年かに一人、そんなのが生まれるらしい。
初めてその事を知った時、『へ〜、便利だな』と言った。
けど、後でよくよく考えてみると、そんなお得なもんじゃなかった。
あいつを見ていると、俺が感じる孤独なんてものは可愛いもんだと思う。
皆が寝静まっても眠る事ができず、誰もが忘れた事を永遠に記憶している。
確かに、『あの時の事を覚えてれば…』なんて思う事はある。
それを思い出せたらいいのにと後悔するなんて事はざらだ。
だからと言ってあいつの能力を本当に便利だとは思えなかった。
忘れたいと思う事や、忘れたから生きていけるなんて事が絶対に人生にはある。
だから、あいつが夜に一人で空を見上げているのを見ると、何もしてやれない自分に無性に腹が立った。
リュスナが死んだと知った時。
傍にいられなかったという後悔よりも先に、『やっと眠れるんだな』と心の底から安堵したのを覚えている。
これであいつが、一人で空を見上げて夜明けを待つ事はない。
一度だけ見に行ったリュスナの死に顔はとても穏やかで、綺麗だった。
いつまでも眠っていて欲しい。
けれど、もう一度会って声を聞きたい。
そんな葛藤を、今日までいったい何度繰り返しただろう。
窓の外を見れば、あの頃と同じように空を見上げるリュスナがいる。
こんなにも傍にいるのに、世界に自分一人だけしかいないのだと主張するような孤独な背中。
抱き締めてやれたらと思う。
俺が傍にいるんだと言ってやりたい。
それがどれ程の慰めになるかは分からないけれど…。
どうやったって、眠らずにいてやる事はできなくて、あいつの苦しみや孤独を本当の意味で俺や他人が理解する事はできないのだ。
寒そうな背中に、上衣をかけても振り向く事はなかった。
リュスナにとって、俺はどのくらいの価値があるんだろうかと時々不安になる。
一番最初に会いに来てくれたのは本当に嬉しくて、誇らしかった。
誰よりも先に想ってくれたんだと思うと、俺がリュスナの中で占める割合は、俺が思っているほど悪くないんじゃないかと思う。
だから俺は決めた。
絶対にあいつを死なせたりしない。
不条理な世界にも、民達にも、あいつの命を二度とくれてやる気はない。
これは決意だ。
覚悟だ。
「二度と一人にはしない。
二度と一人で何かを背負わせたりさせるかっ。
必ず傍にいるから…」
誓うように呟いた言葉は、世界に叩きつけた挑戦状だった。