蒼の王国〜金の姫の腕輪〜
‡〜声なき声〜‡
”鍵”を持って帰ってきた柚月を見た時、なぜか悔しいと思った。
それは多分、たった一人の為だけに生きようとする”男”を柚月の中に感じたからだ。
信念とか、絶対の決意とか、そんな確かにならないものを、他人に感じさせる何かが溢れるのを見たからだ。
尊敬する父や祖父に似たもの感じた。
負けるもんかと思う反面、負けたと思った。
どうしたって年齢には勝てなくて、釣り合いが取れないのはわかりきっている。
《快、おぬしには姫との”縁”がある。
あの男よりも、ある意味おぬしの方が濃い。
行って、おぬしの心のままに行動すれば良い。
導きのまま流されても、抗い進むのも自由。
その眼で見てくると良いじゃろう。
おぬしに良き風が吹かん事を…》
こちらの世界に来た時、感じた事のない感覚が身体中を巡った。
異世界なんて言う未知の場所への不安がそうさせているんだと思った。
けれど、一歩一歩地面を踏みしめる程に、沸き立つような何かに変わっていった。
様々な思いを感じる。
それを一つずつ言葉にするならきっと。
嬉しい。
嫌だ。
許せない。
悲しい。
バラバラだけど、どれも強くて不安になる。
どうしてしまったのか分からない。
俺自身の中に答えがあるようで、決して見つけられないような違和感。
隣で、真っ直ぐ前を見て走る柚月を横目に、これから待ち受けるものに期待と不安を抱いて走る。
そして無心になる。
すると、一つの言葉が浮かんできた。
『今度は一緒に!』
「っ…ッッ」
心臓が跳ねた。
それ程までに強い何かだった。
訳がわからない。
自分意外の何かが自分の中にあるようで気持ちが悪い。
《みみゅ〜みみ〔かい〜ちょっとやすむよ〜〕》
「ん…えっうん」
「どうした?」
「…いや…何でもない…」
辺りはいつの間にか、少し明るくなってきていて、先の方まで景色が見える。
近くにあった石に背を預けて座り、ぼーっとその景色を見ていると、眠くなってきた。
「少し寝ろ、まだ先はあるんだろ」
《みみ。みゅぅ〜〔うん。もうちょっとさき〜〕》
「だそうだ。
適当に起こすから、とりあえず寝ろ」
「…わかった…」
そうして目を閉じると、すぐに落ちるような感覚があった。
『っ…っねぇさまっ…っうっ…ッッ』
(だれ…?)
泣いている…。
悲しくて、苦しくて、不甲斐ない自分に絶望している。
(だれっ…?)
分かっているのに分かりたくないと思う。
『やっと会えたっ』
それは魂からの叫びだった。
そして、かつて抱いた言葉だと気づいた。
『やっと会えたッ』
それは俺の声であり、俺の中の何かの叫びだった。
はっと目を開ける。
朝の光に満ちた景色を見て呟いた。
「…ねぇさま…」
そして静に涙を流した。
”鍵”を持って帰ってきた柚月を見た時、なぜか悔しいと思った。
それは多分、たった一人の為だけに生きようとする”男”を柚月の中に感じたからだ。
信念とか、絶対の決意とか、そんな確かにならないものを、他人に感じさせる何かが溢れるのを見たからだ。
尊敬する父や祖父に似たもの感じた。
負けるもんかと思う反面、負けたと思った。
どうしたって年齢には勝てなくて、釣り合いが取れないのはわかりきっている。
《快、おぬしには姫との”縁”がある。
あの男よりも、ある意味おぬしの方が濃い。
行って、おぬしの心のままに行動すれば良い。
導きのまま流されても、抗い進むのも自由。
その眼で見てくると良いじゃろう。
おぬしに良き風が吹かん事を…》
こちらの世界に来た時、感じた事のない感覚が身体中を巡った。
異世界なんて言う未知の場所への不安がそうさせているんだと思った。
けれど、一歩一歩地面を踏みしめる程に、沸き立つような何かに変わっていった。
様々な思いを感じる。
それを一つずつ言葉にするならきっと。
嬉しい。
嫌だ。
許せない。
悲しい。
バラバラだけど、どれも強くて不安になる。
どうしてしまったのか分からない。
俺自身の中に答えがあるようで、決して見つけられないような違和感。
隣で、真っ直ぐ前を見て走る柚月を横目に、これから待ち受けるものに期待と不安を抱いて走る。
そして無心になる。
すると、一つの言葉が浮かんできた。
『今度は一緒に!』
「っ…ッッ」
心臓が跳ねた。
それ程までに強い何かだった。
訳がわからない。
自分意外の何かが自分の中にあるようで気持ちが悪い。
《みみゅ〜みみ〔かい〜ちょっとやすむよ〜〕》
「ん…えっうん」
「どうした?」
「…いや…何でもない…」
辺りはいつの間にか、少し明るくなってきていて、先の方まで景色が見える。
近くにあった石に背を預けて座り、ぼーっとその景色を見ていると、眠くなってきた。
「少し寝ろ、まだ先はあるんだろ」
《みみ。みゅぅ〜〔うん。もうちょっとさき〜〕》
「だそうだ。
適当に起こすから、とりあえず寝ろ」
「…わかった…」
そうして目を閉じると、すぐに落ちるような感覚があった。
『っ…っねぇさまっ…っうっ…ッッ』
(だれ…?)
泣いている…。
悲しくて、苦しくて、不甲斐ない自分に絶望している。
(だれっ…?)
分かっているのに分かりたくないと思う。
『やっと会えたっ』
それは魂からの叫びだった。
そして、かつて抱いた言葉だと気づいた。
『やっと会えたッ』
それは俺の声であり、俺の中の何かの叫びだった。
はっと目を開ける。
朝の光に満ちた景色を見て呟いた。
「…ねぇさま…」
そして静に涙を流した。