蒼の王国〜金の姫の腕輪〜
‡〜夢の終わり〜‡

『リュスナ姫っッ…二度とこんな無茶っしないで…っ』

ゆっくりと、揺れる視界に眉をひそめながらも目を開けた。
白んできた空が目に写る。
自分は一体どうしたのだろうか。
目覚める前に、懐かしい声を聞いた気がする。
慎重に息を大きく吸い込むと、幾分かはっきりとした頭が冷静に事態を理解する。
背に当たるふわふわと暖かい毛。
地面は芝の様な草で覆われ、殺風景だった場所に青々とした木々が点在している。
瘴気によって見えなかった家が少し離れた場所に幾つか見えた。
空気は冴え渡り、鳥達が楽しげに囀ずりながら空を横切っていく。
ふっと息を吐くように笑みを浮かべると、立ち上がりゆっくりと昨日の場所へと向かう。
穏やかに微笑みを浮かべる子ども。
眠っている様に見える。
しかし、上下するはずの胸が沈黙している事で、この子が死んでしまっているのだと実感した。

「どうか…次は穏やかに笑えますように…」

微笑みながら祈れば、この子の笑い声の様に風が耳元を撫でた。

「リュスナ…」

背後から掛けられた声に驚く事なく、静な怒りをそのまま背に受け、振り向かずに問いかけた。

「…ラダ…怒っていますか…?」
「…分かってるなら聞くな…っ」
「はい…すみませんでした」
「ちがう…」
「?…」
「そう、違うわ☆
こう言う時は、『心配かけてご免なさい』よ◎」
「…はい…ご心配をおかけして……ご免なさい…」
「はい◎
よくできました◎」

イイコ、イイコと子どものように頭を撫でられ、困り顔を向ければ、ニコニコと笑うナーリスと目があった。
少し目を端に向ければ、腕組みをしてそっぽを向くラダが立っていた。

「もう、無茶しちゃだめよ◎」
「…はい…」
「お返事は素早く歯切れ良く、でしょ?」
「はいっ」
「よろしい☆」

改めてナーリスと目を合わせれば、久しぶりに笑顔が恐いと思った。
確実に…かなり怒っている。
内心の動揺に、彼女ならば気づいているだろうが、その態度を変える事はなかった。

「まったく、無駄に有能だと本当に厄介ね〜。
一体どうやってあの術を知ったのかしらぁ?」
「……っ城の蔵書に…『ミュクラーの禁書』があったので…つい……」
「あら☆
『禁書』なんてものをむやみやたらと見るものではないって、賢いあなたなら理解出来ていたわよね?」
「っ…なっなにぶん、まだ幼かったもので…っ」

長いお説教が開幕した。




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